音喜多議員インタビュー「国会答弁の手応えと、日本を仮想通貨先進国にするため必要なこと」

Blockchain
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音喜多議員にインタビュー

参議院の財政金融委員会で麻生大臣や金融庁に対し、暗号資産(仮想通貨)の質疑を行い反響を呼んだ、日本維新の会の音喜多議員(@otokita)にインタビュー*1を実施。ビットコインなど現在の仮想通貨業界に関する見解を伺った。

(*1 新型コロナの影響で、オンラインインタビュー)

仮想通貨先進国に

ー音喜多議員は「日本を仮想通貨先進国に」との目標を掲げてますが、音喜多議員からみて、どの国が仮想通貨先進国と感じておられますか。

一般論だと、特許出願数であるとかマーケットの規模から考えても、やはり「中国」が仮想通貨先進国であると思っています。

ただ、私が注目しているのは「エストニア」ですね。電子政府という面で世界をリードしており、政治や行政のデジタル化が進んでいる中で、ブロックチェーン技術を開発する企業も数多く存在していると。エストニアのことを聞いてみると、ブロックチェーン系のスタートアップは税制優遇があって、意図的に関連企業を集めているということも伺っていますので。

エストニアのような国でも技術先進国になれるというのは、島国日本の一つのベンチマークとなり、目標のひとつとして追いかけていくのが良いのではないかと考えています。

ー日本を仮想通貨先進国にするため、どのようなロードマップを描いてますか

色んなアンケートでも書かれてますが、やはり「ブロックチェーン・仮想通貨」というものが、一般の方々からまだまだ理解されていないのかなと。

私自身、2017〜2018年に出川哲朗さんが仮想通貨のCMをやられていた頃に初めて仮想通貨を購入しました。今振り返れば、相場の天井で掴むという情報弱者ぶりを発揮して大損した苦い思い出もありまして(笑)どうしても世間一般から見ると、「仮想通貨は怪しい、取引所が問題を起こす、周りが損した」などネガティブなイメージもあるのではないかと。

金融庁も、今ではイノベーションより消費者保護の方がずっと重要であるとの意識を持たれてしまっているし、世間の人も同調していると。やはり、「仮想通貨」のイメージを、一足飛びにポジティブなものに転換するのはなかなか難しい。

ですので、ブロックチェーンを例えば公文書管理であるとか、チケットの転売防止であるとか、身近で役に立つところで活用して、「ブロックチェーンってこんなに役に立つんだ」「安心・安全な技術なんだ」というところを認知していただいた上で、「お金にも使えるらしいよ」「これが仮想通貨なんだ」という風に段階を踏んで、しっかりみなさんの信任と理解を得ていくと。

遠回りなようで、実はこれが一番近道なんじゃないかと私は感じています。

国会答弁について

ー国会答弁を拝見していると、麻生大臣らは仮想通貨業界に対してネガティブな先入観が強いのではないかとの印象がありました。政府の金融政策や株式市場などに不利益をもたらすものではなく、税収面などから国策の一つとして捉えられるようになるには、業界としてどのような変化が必要と考えてますか。

みなさんが感じられているように、答弁は非常に後ろ向きというか、イノベーションよりも消費者保護というスタンスが顕著に出ている。政治や行政がこうなってしまうのは、「世論」の影響を敏感に見ているわけですから、ブロックチェーン技術そのものの信頼を、仮想通貨以外からも取り戻していかなければならないというのもあると思います。

一方、株式市場と何が違うのかというと、仮想通貨業界では「政治に圧力をかけられるような団体」を組織して陳情にきて、永田町の政治家一人一人にアプローチするロビー活動のようなものが、良くも悪くも存在しない。

手垢が付いていないという意味で良いことでもあると考えていますが、これは弱みでもあって、私のような変わり種の、新興技術が好きだから政策として携わりたいと考えるようなテック系議員以外には魅力的に映らない。なかなか「政治から変えてやろう」というインセンティブにはならないということがあります。

そういう意味では、仮想通貨好きな一匹狼タイプの人とか経営者とかも、業界の利益に対して協力すべきところは協力し合い、政治に対して良い意味でのプレッシャーをかけていくと。そういった流れも今後必要になるのではないかと考えています。

ー政府としては株式市場に注力したい考えだと思うのですが、ビットコインだと簡単に海外送金できたり、資産逃避を促すという側面がある。その辺りの懸念点について、政治的な解決策はあるのでしょうか。

基本的には、国ってこういった仮想通貨のような新しい存在を嫌いますよね。

ある意味合理的だと思うんですけど。仮想通貨は、地方分散だとか築き上げてきた「中央集権」を否定してしまいかねない技術なので、むやみに促進していくと、自分たちの存在意義まで失われかねない。

そういう危機感は、やはりどこかにあると思うんですよ。ただ、そうは言っても技術革新は止まらないわけで。他国と比べて日本だけ税制高いままで、「消費者保護」の名目で規制で縛りつけていても、世界から取り残されるだけっていう危機感もある。

こと日本に限って言えば、日本社会って「欧米ではこうやっているとか」舶来ものに弱いというか・・・。都合のいい時だけ取り上げるのも問題なんですが、政府がキャッチアップしきれない部分についても、しっかり説得力を持ってお伝えして、政府、官僚、大臣の考え方というのを変えていく必要があるのかなと考えています。

ー今後政治で訴えかけていきたいテーマなど、改めて伝えたいことなどがありましたらお聞かせください。

もちろん税制面の課題もそうですし、例えば今回「レバレッジ規制問題」を取り上げたわけですが、金融庁の有識者会議でも有識者といいながらもブロックチェーンの実態を分かっておられる方が十分に入っていなかったんじゃないかというところとか。政府や規制当局は、「自主規制団体にも意見を聞き、彼らが肯定した」んだと金科玉条のようにおっしゃる方も多いのですが、一方で自主規制団体は金融庁と非常に強い結びつきがある。

そういった団体が、金融庁の方針に対して「ダメです」と否定的な意見はなかなか言えない構造もある。したがって、自主規制団体だけに頼らず、マーケット自体の声を伝えていく、それが政策に結びついていく仕組み作りにも取り組んでいきたいと思います。

今の金融庁と、付随する業界団体だけで物事が決まっていくような「意思決定構造」に楔(くさび)打つということ自体が、ブロックチェーン的な発想というか自律分散型の発想ではないかと思います。

ー業界団体として適切な圧力をかけていく必要性について、過去の事例では、FX(外国為替証拠金取引)業界とか政治に対してしっかりと団体で行動しているところがあるなかで、仮想通貨業界のハードルは具体的に見えているんでしょうか。

伝統的な金融業界には「労働組合」があったり、しっかり組織化されているところが多い。一方で、仮想通貨に限ったことではないですが、新興のベンチャーは、組織化して政治に何か訴えかけるというのは苦手としています。

アプローチの仕方が分からないというのもあるし、新しい産業がゆえに考えがバラバラで、共通の理解がありそうで無いみたいな。「総論賛成、各論反対」みたいなところがあって。仮想通貨業界にも色々な利害関係者がいますから、意見集約がなかなか一つにまとまらない、というのが政治の側から見て感じるところではあります。

熱弁をふるう音喜多議員(オンライン取材にて)

仮想通貨の税制問題について

ー仮想通貨交換業業者ディーカレットに出資するJR東日本の「Suica」の仮想通貨チャージ検討ニュースは大きな反響がありましたが、広く普及させるためには「少額決済の非課税」などの税制変更が不可欠だと感じています。この点について見解をお聞かせください。

まったくその通りで、現在の日本の税制が、イノベーションというか仮想通貨普及のボトルネックとなっているのは間違いないと感じています。

先日も、最大証拠金倍率(レバレッジ)規制について国会で取り上げましたが、政府はレバレッジについて「海外情勢を鑑みて」と言っておきながら、一方で課税水準については、日本は他国に比べて突出して高い水準となっており、ダブルスタンダードとなっている。残念ながら、国内市場のポテンシャルを封じ込めていると思います。

「仮想通貨は、株式や他金融商品と同様にはおすすめできない」と答弁する政治や行政が、仮想通貨の普及はおよそ考えていないでしょう。先日の国会答弁では、麻生大臣が「暗号資産という名前は胡散臭い」というようなこともおっしゃっていた。金融庁が「暗号資産」と名付けたにも関わらず、です。

そういう意味では、仮想通貨・ブロックチェーン関連用語一つ一つを分かりやすく、馴染みやすさを踏まえて検討する余地がある。行政に任せておくと、どうしても「暗号通貨や暗号資産」といった堅苦しい言葉になりますので、業界の方々が先導してイメージ戦略を実施していくことも今後必要になるのではないかなと。

ー国内でも税制優遇に向けた動きがある中で、今年5月に改正された「金商法」では少額決済の非課税について改正が行われなかった。今後、どのようなアプローチをかけていく必要があると思われますか。

国会でストレートに「税制を変えろ」と言っても、答弁でノーと言われて終わりです。まず、今の実態を知ってもらう必要がある。

たとえば、税制の影響によって、いかに市場規模や取引活性化が抑制されていたか、投資家の資金が海外に逃げているのか、というデータをグラフなどで可視化して「これだけ損をしている」と指摘できるような根拠を持ち合わせていない。取引規模などをきちんと試算して、日本のマーケットがいかにシュリンクしているのかということをまず国に調べてほしい。民間でもそういった独自調査を出して、だからこそ「税制を変えて、もう一度世界と戦えるマーケット規模に戻さねばならない」と訴えるべきです。

このように順序立てて議論していかないと、一足飛びに税金を変えようという結論にはならないのではないかと。

なぜ仮想通貨・ブロックチェーン推進を

ー政治を志し、仮想通貨・ブロックチェーンにも関心を持たれたきっかけをお聞かせください。

私はまだ36歳ということで政治家の平均年齢よりも若く、インターネットの世界に親和性があるというか、大学生のころから常に触れてきた世代なので、新しい技術にも関心は高かったです。

私は政治家として「中央集権」ではなく、「地方分権」とかをすごく推している立場なんですね。そういった中でブロックチェーンの本を読んだ時に、自律分散型社会をつくるには必然の技術だなとすごく衝撃を受けた。

今までの人類の歴史では、国の王様や政府が金融取引の権威付けをしなければならない、規制をして守っていかないといけないという状況だった。しかし、自律分散型ブロックチェーンを使えば、信頼が全て担保されて取引が可能になると。究極的には、中央政府や行政さえもいらなくなるというのは、私が目指している地方分権の在り方に近い。

そういった意味では、通貨一つとっても、今までは中央銀行とかメガバンクなど介さなければなかなか信頼性を持って取引とか振込ができなかったものを、ブロックチェーンがもっと実用化されてくれば、個人対個人が信頼を担保されて取引できると。これこそが自律分散型社会、地方分権に資するということですので、そういった意味から私にとってブロックチェーン技術は非常に興味深く、取り組んでいるというのが背景ですね。

ー今、仮想通貨・ブロックチェーン領域で特に注目されている業界はありますか?

私としては、行政文書管理とかをブロックチェーンでやってほしいわけです。

あとはネット選挙。そういう意味では政治行政の世界っていうのは、ブロックチェーンを”核”としてものすごい大きな動きを起こせば、ブロックチェーンのイメージも変わるし、他の医療だとか自動車運転だとか色々なところに使えますから、ブレイクスルーを果たすきっかけになるんじゃないかなと思ってます。

ネット選挙はなかなかハードルが高いですが、まずは公文書管理とか、そういったところに導入したいと思っているところですね。

ー音喜多議員の活動は仮想通貨業界でもかなり注目度が高く、弊社の記事の中でもTwitterの反響はトップレベルです。

2017〜2018年と比べたら仮想通貨のマーケット自体が日本では下火になってしまっていますが、やはり新型コロナの影響でみなさんの価値観が変わってくるタイミングというのは一つの勝負所だと思います。

「新しい日常」のなかで、仮想通貨というのを加え、ブロックチェーン技術を発展させていくという活動を頑張っていきたいと考えているので、引き続きご指導・ご鞭撻頂ければと思います。

音喜多議員Twitter(@otokita

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