ブロックチェーンベースのジャーナリズム支援プラットフォーム「Civil」が幕を閉じる

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ブロックチェーンでジャーナリズム支援のCivilが閉鎖へ

ニュースメディアへの信頼回復のため、高い倫理観に基づいた分散型ジャーナリズムを支援するブロックチェーン・スタートアップ「Civil Media Company」(以下、Civilと表記)が閉鎖されることがわかった。創業者でCEOのMatthew Ilesが公式ブログで明らかにした。

Ilesを含むCivilの技術チームは、同社の主要投資家である大手ブロックチェーン企業Consensysに統合され、Civilの生んだテクノロジーの開発を継続するという。

ジャーナリズムの救世主としての期待

2016年に設立されたCivilは、ブロックチェーンと独自仮想通貨CVLトークンを活用することで、メディアと一般読者双方の参加を可能にし、コンテンツへのチェック機能を設けることで、報道の質を高めることを目指した。さらにトークンを利用した読者からの直接支援で、ジャーナリストや編集者等のコンテンツ制作者側に対する経済的インセンティブを創出し、新たなエコシステムを構築することで、従来のような広告報酬に頼らない「持続可能なジャーナリズム」というビジネスモデルを打ち出した。

Civilは2017年にブロックチェーン大手Consensysから500万ドル(約5億2700万円)の出資を受けている。さらに2018年に入ると、米大手通信社AP通信や大手ビジネスメディアForbesとの提携が相次いで発表され、その存在が大きく注目を集めることとなった。

米公共ラジオNPRのCEO及びNBCニュースのデジタル部門トップを歴任したVivian Schillerや、米コロンビア大学院教授でデジタル・ジャーナリズムの権威Emily Bellが、トークン管理やガバナンスを担うCivil財団に参画していたことからも、Civilに対する業界からの期待値がいかに高かったかを示していただろう。

ICOの失敗

しかし、2018年10月、Civilのトークンセールは残念な結果に終わる。資金調達額は134万ドル(約1億4500万円)と目標額800万ドル(約8億7000万円)には遠く及ばず、Civilは払い戻しを行うと発表した。

Consensysから、350万ドル(約3億8000万円)の追加融資を受けることで、Civilは運営を継続した。2019年2月再度、継続的なトークンセールを開始するとともに、3月には特典付きの会員プログラムを展開。「ニュースルーム」と呼ばれ、それぞれが独立運営を行うジャーナリストや編集者グループ及びメディアパートナーに対するトークン報酬パッケージ配布も、ようやく行われる運びとなった。

しかし、今年5月31日の時点で、ネイティブトークンCVLの価格は以前より大幅に低迷。さらに今年に入り、前述のSchillerをはじめ、ジャーナリストやアドバイザーとして参画していた多くの人材がCivilを去った。

Ilesはブログで、Civilプロジェクトは「革新的な技術を構築し、受賞歴のあるジャーナリストを支援し、参加型のメディアを目指すビジョンで世界中の多くの人々にインスピレーションを与えた」が、最終的には、独立した運営を維持することができなかったと述べている。

高尚な理想を掲げ、それに賛同するメデイア関係者の期待も高かったものの、残念な結果となったCivilの失敗の要因の一つに、Iles自身が「複雑すぎて説明が難しい」というCivilプロジェクトの仕組みがあったとの指摘がある。トークンの購入に関しても大変煩雑なプロセスが必要だったという。

Civilがもたらしたもの

Civilプロジェクトは3年余りの活動の中で、100人以上のメディア会員数を抱えるまでに成長し、イーサリアム・ブロックチェーン上に恒久的に記事の保存を可能にするなど、新しいメディアのあり方を切り開いてきた。特に初期に参加した14のメンバー組織は、100万ドルの助成金を受け取るとともに、専門知識や技術的な面でのサポートを受けることで、独自の成功を収めたことを感謝しているという。

理想の追求を妥協しない「持続可能な分散型ジャーナリズム」という使命の達成には、道半ばとなったものの、Civilは、メディア空間におけるブロックチェーンと仮想通貨を使った画期的な社会実験として、今後のジャーナリズムのあり方を問うことで、大きく貢献したのではないだろうか。

Civilで培われた技術の一つ、メディアや広告におけるアイデンティに関するソリューションは、Consensysに開発の場を移し、次世代のインターネットの構築に貢献するだろうと、Ilesは期待をつないでいるようだ。

出典:Civil

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