官民提携によるCBDC
国際通貨基金(IMF)で金融・資本市場局の課長補佐を務めるTommaso Mancini-Griffoliは、中央銀行が価値を裏付けるデジタル通貨について、イノベーションをもたらすとの考えを明かした。
サークル社CEOのJeremy Allaireがホストを務めるThe Money Movementチャンネルでは、Mancini-Griffoli氏らが登場し、銀行システムなどについて議論を交わした。
同氏の説明する「合成CBDC」は現在、広く考えられているものとは少し異なり、民間の銀行がより重要な役割を果たす。具体的には、民間の銀行が中央銀行に資産を預け、日常における決済に使用できる負債(千円札など日本銀行券は、日銀のバランスシートにおいて負債として計上されている)を発行するというものだ。
発行が許可される銀行は中央銀行による監視、許可制で決められ、負債は日銀に預けられた資産により、完全に裏付けられる。この仕組みでは民間の銀行はいわゆるナローバンクに近くなるとMancini-Griffoliは説明する。つまり、中銀から合成CBDCライセンスを取得した銀行は、様々な決済のみを取り扱い、リスクのある貸付業務などは行わない。
これは、中央銀行が一般に直接負債を発行(=一般人が中央銀行に口座を持つ)し、CBDCに関する全てのプロセスを中央銀行のみで行うという、広く想定されているCBDCとは仕組みが異なっている。同氏はこの仕組みでは中央銀行にとって非常にコストがかかり、同時にリスキーだと指摘する。
さらに重要なことには、この中央銀行が全て取り仕切るCBDCでは、イノベーションを阻害する恐れがある。民間銀行の、顧客と接しイノベーションを創出してきたというアドバンテージと、中央銀行が規制し信用を提供するという双方のアドバンテージを活かしたのが合成CBDCになるとMancini-Griffoliは説明した。
各国でCBDC模索の動き
Mancini-Griffoliはこの合成CBDCについて、公共部門と民間部門が行うそれぞれ行う業務の線引きには議論の余地があるとしており、CBDCについては世界的に様々な模索が行われている段階だ。
フランス中銀は、今月14日にCBDCの実験を執り行ったと発表、実験は上で議論されてきたような小売り向けのCBDCではなく、銀行間決済向けのものだが、CBDCの活用に積極的な姿勢がうかがえる。
同じヨーロッパではオランダ銀行などもCBDCに関するレポートを公開しているほか、最もCBDC発行に近いと考えられている国の一つである中国では、すでに実証実験が複数の都市で行われ、2022年の冬季オリンピックにおいてデジタル人民元が使用される可能性があることが中国の中銀総裁によって明かされている。
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