ポリゴン上ではベース手数料を焼却しない
イーサリアム(ETH)のレイヤー2ソリューションであるポリゴン(Polygon)の開発チームが、次期大型アップグレード「ロンドン」で実装されるイーサリアム改善案「EIP-1559」について、ポリゴン・ネットワークにおける修正提案を発表した。
EIP-1559は、イーサリアムの取引手数料の仕組みを改善する提案で、現行のオークション方式から、ネットワーク全体で標準化された手数料が、アルゴリズムで設定される方式に変更される。手数料はプロトコルが提示するベース手数料と市場原理で設定される優先手数料の二つに分割され、ベース手数料は焼却(バーン)される。
●バーンとは、仮想通貨の発行枚数を減らす行為。仮想通貨のバーンは、株式の「自社株買い」に近い供給量を減らす仕組み。自社株買いをする企業は、発行している株式を自分たちのお金で買い戻す。買い戻されると市場に流通する株数が減少することで一株あたりの価値が向上し、株主に対してプラスの影響を与える。バーンをすることで、流通する通貨の一枚あたりの価値が高まることになる。
優先手数料はマイナーに対するインセンティブの役割を果たすが、ポリゴン開発チームが議論しているのは、ベース手数料の扱い方についてだ。開発チームは、ベース手数料をバーンするのではなく、ポリゴンのDAO(自律分散型組織)が管理する新しいコントラクトに移管し、コミュニティが資金の用途を決定することを提案している。
発行上限のあるトークン
現在、発行上限が設定されていないイーサリアムに対し、ポリゴンネットワークのネイティブトークンMATICには発行上限(100億MATIC)が設定されている。開発チームは、供給量が固定されているMATICを、取引ごとにバーンすると理論上「最終的にゼロ」となるため、報酬の支払い方法の再構築が必要になると指摘した。
ポリゴンチームが提案する新コントラクトへの資金の預け入れは、将来のバリデータへの支払い戦略と似ているという。DAOがネットワークの改善と維持に資金を費やすことが可能になるため、すべてのバリデータにとって長期的な利益をもたらすことになると説明している。さらに、バーンしてトークンの希少性を高めることで価値を上げるのではなく、ネットワークの機能が向上することにより、全てのトークン保持者が恩恵を受けることになると、チームは主張している。
開発チームは、手数料報酬をコントラクトで管理することはあくまでも一つの提案であり、コミュニティからのフィードバックを求めるという姿勢をとっている。
様々な議論
開発チームの提案に対し、コミュニティからは様々な意見が述べられている。
手数料をバーンするかについては、「価値を高めるために賛成」「イーサリアムネットワークと歩調を合わせるべき」という意見も多く散見される。また、50%をバーンし、50%をDAOが管理するという「ソフトバーン」の提案もあった。
問題となっている報酬は、MATICの取引手数料から発生した報酬であるため、バリデータやトークン保有者へ還元すべきだとの意見もある。また複数の鍵でロックされた流動性プールに、ベース手数料を預け入れることで利子が発生する仕組みの提案もなされた。
DAOが新しいコントラクトを管理するという点については、いかに合意形成を行うか、また運営の透明性など、いくつかの課題が指摘されている。
注目を集めるポリゴンネットワーク
イーサリアムのスケーリング問題の解決策の一つとして注目を集めるポリゴンは、今年、過去最高価格を更新した5月時点で、年初から実に140倍を超える急騰を見せた。ポリゴンは、取引所最大手のバイナンスIEOで2019年4月に上場。今年3月には米大手取引所コインベースに上場を果たしている。
今月初めには、ブロックチェーンに特化したベンチャーキャピタル、AU21が、ポリゴン関連プロジェクト支援に、総額2,100万ドル(2.3億円)のファンドを立ち上げた。時期を同じくして、米仮想通貨投資企業Bitwiseも、ポリゴンを主要銘柄指数(Bitwise 10 Large Cap Crypto Index)に新たに組み入れている。
直近では、Kyber Networkが、流動性提供者に報酬を分配するプログラム「Rainmaker」の対象の一つにポリゴン・ネットワークを選定。6月30日から2ヶ月間、Kyber NetworkのトークンKNCとMATICの合計6億円相当が、6つのプール(USDT-USDC、USDC-ETH、USDC-DAI、MATIC-DAI、KNC-ETH、KNC-MATIC)の流動性提供者に分配される。
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