Chainalysisの分析ツールを採用の意向
米財務省の外国資産管理局(OFAC)が暗号資産(仮想通貨)取引を追跡するために、ブロックチェーン分析企業Chainalysisのプラットフォームを採用する意向であると発表した。
OFACは、特定の外国政府や個人、グループなどに対する米国の経済制裁プログラムを管理・実施する機関である。
OFACによると、このブロックチェーン追跡用のオンラインアプリケーションは、Office of Global Targeting(OGT)の調査員が使用する。インターネット上の経済制裁の取り組みの一環として、制裁対象となるリストに掲載を検討する国家や個人を特定するために利用される。
OFACは、5月初めに「アドレスのグループ分け、仮想通貨ウォレットのエクスプローラー、ユーザー行動と市場データの分析」などの機能を搭載した分析ツールを求めていると通知を出していた。Chainalysisのプラットフォームは、これらの要件を満たしたものとなる。
これに加えて、すでに他の機関でも広く使われている点において、Chainalysisのプラットフォームは利便性が高いと判断した格好だ。OFACは次のように説明した。
主要産業、米国政府、および外国のパートナーもChainalysisのツールを使用している。そこでマネーロンダリング防止やテロ資金調達に関する調査において、これらのパートナー機関とスムーズに協力できるようにするためには、OFACが同じツールを使うことが必要だ。
またChainalysisのプラットフォームへのサブスクリプションには、トレーニングメニューも含まれている。
ユーザーサポートやその他の機能に加えて、「認定トレーニングパッケージ」や「スペシャリスト・トレーニング」などの学習コースが用意されており、最大10名のユーザーにバーチャルで提供されるという。
発注が完了すれば、OFACは今後5年間このサービスを利用可能になる。通知には最初の期間として2021年7月15日から2022年7月14日、さらに延長できる「オプション期間」は2026年7月14日まで用意されていた。
通知は、もしChainalysisと同様の分析ツールを提供できる企業があれば、その内容を説明する書類を送ってほしいとも記載している。
制裁対象のウォレットの受け取り資金増加
ブロックチェーン分析企業Ellipticが最近公開した「仮想通貨における制裁コンプライアンス」というレポートによると、OFACが最初にビットコイン(BTC)アドレスを制裁対象としたのは2018年だ。それ以来ブラックリストに登録されたウォレットは増加し、これまでにビットコインやイーサリアム(ETH)で1億7,500万ドル(約190億円)以上の資金を受け取っているという。
金融犯罪を行う者は、様々な方法で追跡を回避しようとする。レポートは「ミキシング(複数の取引データを混ぜる)や、プライバシーコイン、プライバシーウォレットにより仮想通貨の出所を隠匿すること」や「規制されていない取引所を使用して、顧客身元確認を避ける」、そして「仮想通貨マイニングに関与する」ことを回避方法として指摘した。
レポートによると、仮想通貨企業が、取引の前に相手のウォレットを調査して以前に疑わしい活動をしていないか確かめることなどにより、制裁対象のウォレットに関わることを避けられるという。
コンプライアンス強化中の仮想通貨企業
多くの仮想通貨企業が、過去1年間でコンプライアンスチームを強化している。例えば仮想通貨取引所BitMEXやカストディ企業BitGoは、それぞれ2020年10月と2021年1月にコンプライアンス担当管理職を採用した。
またピアツーピア(P2P)取引所LocalBitcoinは、より優れた顧客身元確認(KYC)ツールを実装することでコンプライアンスを強化。仮想通貨メディアThe Blockに、2020年にユーザーのダークマーケットに関連するアクティビティを70%削減できたと語っている。
最近事例だと、米大手仮想通貨マイニング企業Marathonは、5月初旬に米国の規制に準拠する「Marathon OFAC Pool」の立ち上げを発表している。マネロン防止基準やOFACの基準を遵守し、経済制裁対象に指定された者の取引を処理しないようにするマイニングプールだ。
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