仮想通貨市場
週末の仮想通貨市場では、ビットコイン(BTC)が先週の急落で記録した安値30,000ドルに再び迫った。過去最高値の約65,000ドルからは-50%を超えて下落した水準にある。
先週(〜19日)の仮想通貨では、大規模な強制ロスカットを伴う急落で全体時価総額からわずか1週間で約1兆円が蒸発。アルトコイン相場の大暴落でバブル崩壊懸念の高まり、流動性が枯渇する売り優勢の市場環境が続いた。ビットコイン相場の急落を受け、米インフレ懸念を受け、カネ余りが押し上げた金融相場の転機と見る見方もで始めた。
大幅下落の背景としては、米連邦準備理事会(FRB)の資産購入の縮小(テーパリング)開始時期を金融市場も探る中、13日テスラ社のビットコイン決済停止ニュースが報じられ、仮想通貨市場が動揺したことにある。各国の規制面では、①中国による金融機関等の仮想通貨扱い禁止を強調、②中国の仮想通貨マイニング規制の強化が逆風となったほか、米国で①米通貨監督庁による仮想通貨関連の政策方針見直し②米国の確定申告時期にIRSの税務調査の拡大が報道、香港でも①個人投資家の暗号資産(仮想通貨)取引を禁止する法案が検討されていることが明らかになるなど、ネガティブ材料が相次いで報じられたこともセンチメントを悪化させた。
業界の重要ニュースをチャートに反映させると以下の通りになる。
マーケットの資金流出は、バブルに例えられる過熱相場で市場規模を押し上げたアルトマーケットが顕著。市場占有率を%で表すBTCドミナンスは、39%台から45%台までわずか5日で急上昇した。
中国、仮想通貨マイニング規制強化へ
中でも最も重要なのが中国のマイニング・取引規制強化だ。先日報道した通り、21日に開催された中国の国務院金融安定発展委員会(金融委員会)でビットコインのマイニング及び取引を取り締まる方針が表明された。特筆すべきは今回の発表で、中国政府が初めてマイニングに対する取り締まりについて言及したこと、そして中国の劉 鶴(りゅう かく)国務院副総理が会議を主催した点となる。
具体的な取り締まり方法や方針は現時点で明らかではないが、中国政府の首脳陣メンバーが金融リスクの観点から「ビットコインのマイニングと取引の取締り」について言及する異例の発表となった。
発表の影響
国務院の発表を受け、ビットコインのマイニング事業者や、中国の仮想通貨取引所は対応を迫られた。
中国の大手仮想通貨取引所Huobiが一部人民元(RMG)建のOTC取引サービスを24日より停止するという情報も飛び交ったが、仮想通貨メディアBlockBeatsによれば、ユーザーの誤解を防ぐために取引サービスの停止を撤回。現在の事業を通常通り行うと発表したという。
一方、Huobiの手がけるマイニングプール、Huobi Poolは中国ユーザーにサービス提供を中止すると発表。ビットコインのマイニング機器の販売やカストディサービスの中止で、Huobiのマイニングプールとは別のサービスとなるなど、すでに影響も出ている。
Huobi Pool stated that it will stop providing services to Chinese users. Those who have already purchased Bitcoin mining machines will be removed from the shelves, a interesting thing is that Huobi said that FIL mining machines will not be affected. pic.twitter.com/B62PII7pmB
— Wu Blockchain (@WuBlockchain) May 23, 2021
有識者の見解は
中国の仮想通貨事情に精通する有識者のDovey Wan氏は「推測しない」と言及しつつ、中国共産党の副総裁レベルの官僚が発言する場合、通常は発言の前に実行計画が策定されているとコメント。施行は比較的早く、10日以内に展開される可能性があると述べた。
I will not speculate on “news” out over China weekend
When VP level CCP official speaks, usually execution plan has been drafted out before the talk
The enforcement should be relatively quick and deployed swiftly, likely within 10 days
Hope for the best, prepare for the worst
— Dovey “Rug The Fiat” Wan🪐🦖 (@DoveyWan) May 23, 2021
Links株式会社のSonny Wang取締役も22日、中国当局による今回の発表は「これまでとは違う」と影響の大きさを強調。中国国内の仮想通貨マイニング事業者は中国撤退を余儀なくされる可能性もあると述べ、今後も中国政府による取締りの余波が現れると考察した。
Colin Wu氏も国務院の重大発表以外には具体的な情報はないと説明し、そのせいで様々な情報や憶測が飛び交い、相場のボラティリティにつながると指摘。今後数週間もこの混乱が続く可能性があると警戒感を示した。
In fact, at present, there is no definite information about China other than the words of the State Council, “crack down Bitcoin mining and trading”. Because of this uncertainty that any small news or even rumors can cause market volatility.
— Wu Blockchain (@WuBlockchain) May 23, 2021
中国国内でも、四川省や新疆省など、安価な電力を誇る地域は仮想通貨マイニングの一大拠点として知られており、英ケンブリッジ大学の分析では、欧米圏でも拡大するマイニング拠点を加味しても、20年4月時点でビットコインのハッシュレートの6割以上が中国から由来したとする統計もある。
四川省の豊富な水力発電から発生した余剰的な電力を活用する事例もあるが、新疆など一部では石炭などの化石燃料を大きく利用する地域もあり、中国政府の二酸化炭素(Co2)排出量削減の方針と相反する部分も指摘されてきた。
仮想通貨コメンテーターのNic Carter氏は「オンチェーンデータから仮想通貨マイナー(採掘業者)による(異例なレベル)の売却が起きた」と指摘。市場の下落を後押しする大きな要因の一つになっていると解説した。
Everything I’m seeing indicates an absolutely seismic shift of hashpower out of China and into the world at large. It won’t be elegant or pretty but obviously it’s great for hashrate distribution (& likely carbon intensity)
— nic carter (@nic__carter) May 23, 2021
これらの点から、中国からマイナーが世界に移動するハッシュレートの劇的な変化(地殻変動)を示唆するとCarter氏は考察。「上品で綺麗ではないかもしれない」ものの、ハッシュレートの分散化やマイニングによる二酸化炭素の排出量削減には好影響を与えると分析した。
窓価格情報
週末の価格を織り込んだCME(米シカゴ・マーカンタイル取引所)のビットコイン先物は、1805ドルの「窓(ギャップ)」で取引を開始した。
- 終値:36085ドル(3,932,561円)
- 始値:34280ドル(3,735,851円)
- 窓(ギャップ):1805ドル
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