YieldlyがIDO実施
分散型パブリックチェーン「アルゴランド(Algorand)」にて、「Yieldly」と呼ばれるDeFi(分散型金融)プロジェクトが6月にローンチ予定であると発表された。ローンチに先立ちYieldlyは、DEX(分散型取引所)「TrustSwap」にて、5月21日から26日(太平洋基準時、PST)までの間、IDO(Initial DEX Offering)を実施。アルゴランドのプロジェクトがIDOを実施するのは、今回が初めてだ。
IDOで資金調達
IDOとは、Initial DEX Offering(イニシャル・デックス・オファリング)の略称であり、DEX上で行われる資金調達方法を指している。IEO(Initial Exchange Offering)に類似した概念だが、一般的には中央集権型取引所が中心となって行うIEOと異なり、IDOでは、単一の管理組織が存在しないDEX上で資金調達が実施されるため、よりオープンな参加が見込まれている。また、即座に流動性へアクセスできることも特徴の一つだ。
5月21日からTrustSwapで実施されるIDOにて、Yieldlyは、2,000万のトークン(完全希薄化済み)を売却する予定だ。Yieldlyの流動性は、6月初週から他の取引所でも利用できるようになるという。Yieldlyは今回のIDO以前にも、170万ドル(約1億8,500万円)の資金を、Borderless Capital、NEO Global Capital(NGC)、LD Capital、OKEx Dream FundおよびLongHash venturesなどの投資企業から調達している。
Yieldlyの創設者、Sebastian Quinn氏は、アルゴランド初のIDO実施について以下のように述べている。
Yieldlyは、真にボーダレスで相互接続しているDeFiエコシステムに関して、我々と同じビジョンを抱いている一流組織と協業したいと考えている。アルゴランド初のIDOを実施するパイオニア企業になることができ嬉しく思う。TrustSwapのLaunchpadは、イーサリアムやAvalancheといった主要プロトコルの交差点に位置している。YieldlyおよびAlgorandをTrust Swapにもたらすことができて光栄だ。
Yieldlyとは
アルゴランド上で初のIDOを行うYieldlyの目玉プロダクトが、「損失なし」の宝くじだ。この宝くじのシステムは、50年代の英国で人気だったプレミアム国債をモデルにしているという。
具体的には、YieldlyのプールにALGO(アルゴランドのネイティブ通貨)をステーキングすると、ステーキング参加者の中から当選者が決定され、毎週「当たりくじ」が配布される仕組みになっている。つまり、ステーキングするだけで、宝くじを受け取る権利が生じる。バイナンス・スマートチェーンのPancakeSwapや、イーサリアムのPoolTogetherに類似したプロダクトだ。
Yieldlyは、事実上アルゴランドのAMM(自動マーケットメーカー)になることを目指し、21年内に、アルゴランド上の他のプロジェクトおよび外部プロトコルへ、この宝くじシステムを拡大していく予定だという。
その他Yieldlyでは、ステーキングの報酬を得られるプールや、アルゴランドおよびイーサリアム間のブリッジとなる資産トレード機能も用意されている。
Yieldlyはまた、最も環境に優しく二酸化炭素の収支がマイナスになるブロックチェーンを目指すという、アルゴランド財団の取り組みもサポートしており、自身も温室効果ガス排出量が実質ゼロになるようなビジネスモデルを構築している。実際Yieldlyは先日、二酸化炭素相殺に向け、カーボンオフセットのクレジット購入量を増加させたという。
アルゴランドでDeFiを構築するメリット
アルゴランドは公式ブログにて、YieldlyのようなDeFiプロダクトを含むプロジェクトがアルゴランドを利用する利点の一つは、いわゆる「ブロックチェーンのトリレンマ」問題に対処できることだと述べている。「ブロックチェーンのトリレンマ」とは、イーサリアムの開発者、Vitalik Buterin氏により提唱された概念であり、パブリックチェーンに必要な「スケーラビリティ」「分散性」および「セキュリティ」のうち、どれか二つを優先すると、残りの一つが犠牲になってしまう状態を表している。
アルゴランドでは、Pure Proof-of-Stake(PPoS)と呼ばれる、PoSの一種を用いることにより、トリレンマ解消に挑戦している。PPoSでは、独自のアルゴリズムに基づき、トークン保有者の中からランダムにバリデーターを選出することにより、分散性およびセキュリティを保証している。アルゴランドの創設者、Silvio Micali氏は、著名AI科学者Lex Fridman氏のポッドキャストに出演した際に、PPoSのランダム性について、「ランダム性は、分散化を実現し、ネットワークを潜在的な51%攻撃から防ぐための強力なツールだ」と述べている。
またスケーラビリティに関しては、アルゴランドでは、トランザクション一回にかかる「ガス代」が0.001 Algo(約0.12円)と低コストな設計になっている。創設者のMicali氏は、更なる処理能力向上を目指し、1秒間あたりのトランザクション数を、1,000から46,000へと変更することを提案している。
アルゴランド・ブロックチェーンでは、トランザクションのファイナリティ(あるトランザクションが覆されないという確定)が即座に形成されるため、複数のブロックがチェーン上に形成されず、フォークの可能性が排除されている。これによりDeFiプロジェクトは、不確実性に伴う価格変動や、コミュニティ分裂を懸念することなく、アルゴランド上にプロダクトやサービスを構築できるという。
アルゴランド・アクセラレータ・プログラム
今回IDOを実施するYieldlyは、アルゴランドの運営主体「アルゴランド財団」が主催するインキュベーター・プログラム、「アルゴランド・アクセラレータ・プログラム」出身のプロジェクトだ。アルゴランド財団の他、ブロックチェーン投資企業「LongHash Ventures」、およびYieldlyの資金調達にも関わった「Borderless Capital」が、このプログラムを率いている。
このプログラムでは、主に「Finance 3.0」や「オープンファイナンス」と呼ばれる次世代金融分野において、新興プロジェクトの育成および発展をサポートしている。アルゴランド・ブロックチェーン上でのプロジェクト構築、またはアルゴランドエコシステムへの貢献がプログラム参加の条件であり、受賞プロジェクトは、助成金や技術サポート、有名企業の創設者やCEOからの助言などを受けることができる。
アクセラレータ・プログラムに参加したプログラムには、Yieldlyの他にも、仮想通貨に特化した決済ソフトウェア開発キットの「MugglePay」や、コミュニティ基盤のDeFiプロジェクト「StakerDAO」などがある。
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