テスラ社BTC決済中止の考察
米投資企業Fundstrat社のトム・リー氏は16日、テスラ社のビットコイン(BTC)決済中止が暗号資産(仮想通貨)の今後に与える影響を考察した。米メディアBusiness Insiderとのインタビューで見解を語った。
ビットコインを筆頭に仮想通貨市場は先週13日から大幅下落傾向にある。株式市場の急落でリスクオフに傾いていたほか、米EV大手テスラ社のイーロン・マスク CEOがビットコイン決済の中止を表明したことも引き金となった。
マスク氏は、仮想通貨の将来性を高く評価すると述べつつ、ビットコインのマイニングにおいて石炭など「化石燃料の使用」が増えている点に懸念を示した。この発表を受け、仮想通貨業界内外でBTCマイニングの環境への影響に関する議論が再燃した格好だ。
この点について、Fundstrat社の著名アナリストであるトム・リー氏は、以下のように述べた。
これを機に、必ずしも人々がビットコインにネガティブな視点を持つとは限らないが、デジタル資産の課題に対する注目は集まるだろう。
再生エネルギーなどより効率的に(マイニング)を提供する手段を模索するための、ビットコイン業界への呼びかけとして、(建設的な議論が進むきっかけとして)捉えるべきではないか。
ESG重視が影響か
テスラ社のビットコインの決済導入後、一転して姿勢を改めた要因は環境面への影響としているが、これは導入前からわかっていたとの指摘も少なくない。トム・リー氏は、発言を翻した背景には、環境、社会、そしてガバナンスを意識するテスラ社の「ESG投資」の影響があると見解を述べた。
多くの顧客がテスラ社のESGフレンドリーな面に惹かれてきた。このような層から「仮想通貨を受け入れるならビットコイン以外がいいのでは」と声を上げたのかもしれない。
ロイター誌の報道によれば、テスラ社はBTC決済中止発表前、米政府補助金を視野に再生可能燃料クレジット市場への参入を検討している。
関係者の話によれば、テスラ社を含む8社が米環境保護庁(EPA)に再生可能クレジットなどに関する申請を提出したという。今年1月に発足したバイデン政権はゼロ・エミッション宣言を発令するなど、グリーン戦略を主要政策として掲げているため、テスラ社のような大手企業が参入することで、再生可能燃料クレジット市場に注目を集める可能性が考えられる。
環境面の課題も
トムリー氏は、ボラティリティ(価格変動性)の側面からもビットコイン決済を停止する要因は頷けると考察。決済時点とテスラ車の受け渡しとの間だけでもBTC価格が変動するリスクは大きいと言及し、「企業的な観点」からも、想定以上に実用性に難があった可能性があると指摘した。
同氏は、中長期的にはビットコインに対する強気な姿勢は崩していない。2021年末までにはビットコイン価格が12万5,000ドル(約1,400万円)に達すると価格予想を上方修正した。強気姿勢を維持する要因として、ビットコインネットワークの発足以来、不正に取引が改ざんされた事例が未だない点を挙げた。
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