中国人民銀行副総裁、ビットコインを資産として認める発言

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中国政府の見解は

中国人民銀行の李波(Li Bo)副総裁が18日、ビットコインなどの仮想通貨やステーブルコインを代替投資資産として捉えているという見解を示した。中国事情に詳しい専門家によると、中国政府関係者が仮想通貨の資産価値を認めた発言をしたのは初めてとなる。

中国海南省で例年開催される大型国際会議「ボアオ・アジア・フォーラム」で登壇した際、暗号資産(仮想通貨)やデジタル人民元の活用方法について言及した。

中国人民銀行は中国の中央銀行に相当する。日銀総裁に相当する最高責任者は全人代で任命されている。

ボアオ・アジア・フォーラムは2002年から毎年開催されている国際会議。2020年は開催されなかったため、2年ぶりの開催となっており、議題には中国の「一帯一路」構想や気候変動なども取り上げられ、20日には習近平指導部の要人がオンラインで参加する模様だ。

中国人民銀行の周小川元総裁と登壇した李副総裁は仮想通貨について以下のようにコメントした。

我々はビットコインとステーブルコインを暗号資産と考えている。

暗号資産は投資の選択肢(代替投資)であり、それ自体は通貨ではない。

また投資ツールとしての暗号資産を取り締まる規制ルールが必要との立場を示しつつ、どのような規制が必要か分かるまでは「現在の取り組みや慣行を継続していきたい」と述べた。

前述通り、中国系SNSでも同発言が初めて資産として認める発言として、ポジティブに捉える意見が多く見られている。

ステーブルコインへの規制

一方、法定通貨などを担保にして価値の安定を目指すステーブルコイン(民間発行デジタル通貨)については、「今のビットコインよりもはるかに強い」規制が必要と発言するなど懸念を示した。

民間企業が決済手段として活用されるステーブルコインを発行するためには、既存の銀行のような規制準拠しなければならないとしており、新たな規制強化の可能性を示唆した格好だ。

李副総裁と登壇した周氏もデジタルアセットとデジタル通貨の区別化は必要と同意。さらに中国では実体経済への貢献に「特別な注意を払っている」と付け加え、実体経済に密接に統合され、貢献していかなければならないと述べた。

中国国内におけるステーブルコインは、中国政府の検閲を逃れる決済手段にもなっており、取引所へのアクセスが制限される中、USDTなどのステーブルコインを活用した仮想通貨への投資ルートが水面下で拡大している。

仮想通貨については、ポジティブとも捉えられる発言となったが、ステーブルコインの規制強化に伴う、間接的な仮想通貨市場への影響も懸念される。

デジタル人民元

また中国が各国に先駆け実証実験を続けるデジタル人民元(DCEP)について、李副総裁は人民元がドルや国際的な通貨に代わることを目指していないと説明し、現段階では「国内の利用に注力している」と述べた。

我々の目標は市場に選択肢を与え、国際貿易や投資の促進を図ることだ。

周小川元総裁も20年12月に上海ファイナンス・フォーラムで登壇した際に、デジタル人民元が「国境間の貿易や投資における利用を目的に構築されているもの」と説明しているが、李副総裁は国際的な相互運用は非常に複雑な課題で「特定の解決策に達することを急いでいない」とも言及している。

その一方で、2022年の北京オリンピックで国際決済利用を検証する計画を公開。中国市民の他にもアスリートや観光客を対象にデジタル人民元の使用実験を行う可能性があるとコメントし、長期的には国際的な活用を示唆した。

国際的な重要性増すCBDC

日銀も4月5日にCBDC(中銀デジタル通貨)の実証実験のフェーズ1を開始。欧州連合(EU)など主要国でもCBDCの実証実験が相次いで進められているが、既に11の主要都市でCBDCの実証実験を完了している中国が頭ひとつ抜きん出ている。

先月26日にオンラインで開催された「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」第1回会合では全国銀行協会が「中国をはじめ、海外の一部で実証研究が急ピッチで進行していることを踏まえると、まずは調査研究面でのギャップを埋める必要がある」と述べていた。

最近ではPayPal創業者のPeter Thiel氏がビットコインやCBDCを中国政府がある種の金融兵器として活用する可能性があると危機感を示しており、米議会でもデジタル通貨の検証を行うべきという声も挙がってきた。

米国ではボストン連邦準備銀行とマサチューセッツ工科大学(MIT)がデジタル・ドルのプロトタイプに関する研究を2020年8月に行ってきたが、FRB(連邦準備銀行)のPowell議長はCBDCの可能性について慎重な姿勢を示してきており、「具体的な方針は米議会によって決められるべき」と発言。

米ドルの世界的地位を揺がしかねないとの懸念も挙げられており、米国で仮想通貨だけではなくCBDCに対する明確な方針が定まっていないことから早急な対応を求める声も少なくない。

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