フィンテック企業に銀行免許を与えることの是非
米国議会の公聴会で、暗号資産(仮想通貨)企業を含むフィンテック企業に、銀行免許を与えることの是非について議論が行われた。仮想通貨業界に肯定的な政策実施で知られる、元通貨監督庁(OCC)最高責任者のBrian Brooks氏らが証言を行った。
ディスカッション内容の多くは「仮想通貨企業がバンキングサービスを提供しようとする場合、OCCが許可を出すべきか」というテーマを中心とするものとなった。
集まったパネリストの多くは、Brooks氏がOCCで役職に就いていた際、様々なフィンテック企業に銀行の設立許可書を発行していたことを批判した。具体的には、今年1月の大手仮想通貨カストディ企業Anchorageが国法銀行の設立許可書を取得した事例が挙げられる。仮想通貨企業としては、米国初の国法銀行となった。
コロラド大学法科大学院のErik Gelding教授は、OCCが預金を受け入れる予定のない事業体に、新たな銀行設立許可書を発行しないよう議会に働きかけている。
また、エモリー大学法学部のKristin Johnson教授は「預金を持たない国立銀行は矛盾している」と発言。銀行免許によって規制される活動の一部を行うだけで、銀行が通常行う業務の大部分を行わない企業を、国立銀行と認めるべきではないと批判する。
大企業による免許取得を懸念
OCCの方針について批判的な論者の多くは、大企業が銀行免許を悪用し得るリスクを挙げている。例えば、FacebookやAmazonのような民間企業が銀行免許を求める可能性があり、そうした場合データプライバシーや公正な企業間競争の上で、懸念が生じるという。
特に、Facebookが主導するステーブルコインプロジェクト「ディエム(旧称リブラ)」は各国政府からの批判を受け、規制対応のために大幅に計画変更した経緯があり、このことが念頭に置かれている可能性もある。
「金融包摂のためにも新興企業が参入できるべき」
一方Brooks氏は、フィンテック企業が銀行口座を持たない人々、特に従来型銀行の支店が遠くにあるような地域の人々にも銀行サービスが提供できることを強調した。
フィンテック企業がそのような業務をより広く行うためには、「銀行免許」が必要になるケースがあるという。連邦銀行免許を取得すれば、どのようなサービスを提供する企業でも、煩雑で費用のかかる手続きを削減することが可能になるからだ。
例えば、米国では州ごとに規則が異なる領域があり、銀行免許がなければ、新興の決済企業が業務を展開したい州ごとに送金業者のライセンスを取得しなければならないことがある。そうした場合、新規参入は困難なものになってしまうとBrooks氏は指摘した。
またBrooks氏はThomas Curry長官(2017年まで在職)の時代より、OCCの立場は「預金業務、融資業務、決済業務など、一つ以上の中核的な銀行業務に従事する企業は、潜在的に国法銀行の設立許可書を受ける資格があるとするものだった」と公聴会に関する書面で説明。
この立場への反対は「既存の銀行を保護すること」「州の規制当局だけが銀行以外の金融機関のライセンスを発行できるという権限を守ること」を主な理由として行われていたと主張している。
なお、米国で仮想通貨企業として初めて銀行免許を取得したAnchorageの法務担当者Georgia Quinn氏は「銀行が提供可能なすべてのサービスを提供しなければ、銀行と認められないのは理不尽だ」と仮想通貨メディアThe Blockに語った。
銀行業務に当てはまるようなサービスが、一律に銀行免許という同じ規制のもとで評価されることで、公平な競争の場が生まれるとQuinn氏は述べている。
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