仮想通貨と金融包摂
大手送金アプリPayPal社のCEOであるDan Schulman氏が13日、暗号資産(仮想通貨)関連のサービス拡大を示唆した。フォーブス社主催のオンライン・シンポジウム内で、送金領域における仮想通貨やCBDC(中銀デジタル通貨)ポテンシャルを高く評価する姿勢を示している。
フォーブス社は4月13日、「2021 Blockchain 50 Symposium: Crypto Goes Corporate」と題し、大手企業による仮想通貨の導入についてネット上でカンファレンスを実施。登壇した関係企業にはPaypalやVisa、Northern TrustやJPモルガンなど10社以上の大手企業が参列し、参加者は1,000以上を記録した。
Forbes社のMichael del Castillo共同編集者との登壇の中で、PayPal社のSchulman氏は、「金融業界において、今後5年間で起きる変化は過去30年間の進歩を大きく上回る」と述べ、ビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨がその先陣を切ると予想。
現金やクレジットカード決済からデジタル通貨(≒仮想通貨)決済が今後5年から10年間で加速すると持論を語った。
金融包摂に貢献
また既存の金融業界は送金の効率が悪く、時間がかかる上に金融システムから切り離されてるアンバンクド(銀行口座を持たない人口)が低所得層を中心に多く存在することを課題として挙げた。実際、先進国のアメリカでも低所得者の間では銀行口座を持たない米国市民も多く、コロナ禍で給付金の受け取りに時間がかかることが社会問題に発展している。
Schulman氏は仮想通貨のポテンシャルについて「仮想通貨やCBDCなどのデジタル通貨が送金時間や送金コストの低下にもつながり、金融システムにおける金融包摂の向上に貢献する」と高く評価した。
仮想通貨のサービス拡大に言及
また、このような金融包摂を目指す上で、PayPal社としても仮想通貨サービスの範囲拡大を検討していることがわかった。PayPal社は20年10月に仮想通貨売買サービスの提供を開始。ビットコイン、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)の4銘柄の売買と保有を可能にしていたが、今後は「仮想通貨を日常的な取引の資金源として活用したい」とし、決済利用も展開する方針を示唆した。
最終的には「より包括的な経済という崇高なビジョンがあり、今とは大きく異なるシステムになる」と述べ、仮想通貨決済だけではなくスマートコントラクトを導入したトランザクションなど「基本的な取引からそれ以上の価値を提供できる」システムの構想も明かした。
すでに提供している仮想通貨売買サービスは好調で、Schulman氏によれば今後数ヶ月で、取引量は2億ドル(約220億円)に到達する可能性がある。
米国では、PayPalによる仮想通貨決済サービスはすでに開始されており、3月末に上記4名柄によるオンライン決済が可能となっている。ロイターがPayPalの決済開始を報じた直後には、ビットコイン価格が上昇するなど市場にも好感された。
一方、PayPal社がビットコインを企業資産として保有する可能性については「低い」とコメント。企業資産としてはボラティリティの低い資産を保有する方針を掲げた。
コロナ禍で普及進む
他企業では、企業資産としての仮想通貨保有も珍しくなくなり始めている。
1,000人以上が参加したオンラインイベント上のアンケートでは、500以上の参加者が回答。26%の回答者が「自分の会社が今年ビットコインを購入するだろう」と予想した。イベントの登壇者の一人であるMicroStrategy社のMichael Saylor CEOは「1年ほど前にはゼロに近かった事を考えれば、26%は大きな進歩だ」とコメントした。
米国の大手資産運用企業バンガード社のブロックチェーン戦略部門責任者であるJohn Evans氏は、新型コロナウイルスの感染拡大が企業によるブロックチェーンの導入を促進したと説明。「ロックダウン開始から年末に至るまでマーケットで起きた全ての出来事の影響が、金融機関によるブロックチェーンの受け入れを後押しした」との見解を示した。
昨夏MicroStrategy社が財務資産としてビットコインを購入したことを公表して以降、テスラ社など大手企業によるビットコイン保有やビットコイン決済の導入事例が相次いだ。コロナ禍における大規模金融緩和などの影響で、仮想通貨の普及が一段と後押しされた側面は否めない。
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