ECBが公開協議の結果を発表
欧州中央銀行(ECB)が、デジタルユーロについて公開協議結果を発表した。回答者の多くが最も望ましい機能として「プライバシー保護」を挙げた。
これは市民や専門家から広くデジタルユーロについての意見を募ったもので、2021年半ばに、EUがデジタルユーロ計画を正式に立ち上げるかどうかを決定する上でも参照されることになる。
意見の募集は、20年10月12日から21年1月12日にかけて行われ、8,200件を超える回答が集まった。回答者の大多数(94%)は民間人で、残りは銀行、決済サービスプロバイダー、小売業者、テクノロジー企業などの専門家である。
ドイツ(47%)からの回答が最も多く、イタリア(15%)、フランス(11%)と続いた。今回の回答は、必ずしもEU圏の人々の見解を代表するものではないが、当局の分析作業や今後の決定に重要な情報を提供するものだという。
デジタル通貨について、回答者が最も望んでいるのはプライバシー機能(43%)だった。次にセキュリティ(18%)、ユーロ圏全体で決済できる機能(11%)、追加費用が発生しないこと(9%)、オフラインでの使いやすさ(8%)と続いている。
プライバシーに関連して「プライバシーを重視したオフラインのデジタルユーロ」「追加で革新的な機能を備えたオンラインのデジタルユーロ」、またはこの2つの組み合わせの中では、多くの市民が「プライバシーを重視したオフラインの通貨」を好ましいものとして選んだ。一方、専門家はオンラインとオフラインのハイブリッドを好む傾向にあった。
プライバシー保護が重視されると同時に、違法行為を回避するための要件も支持されており、完全な匿名性を支持するとした市民は10分の1未満である。
ECB理事会のFabio Panetta氏は「デジタルユーロは、ヨーロッパ人のニーズを満たしている場合にのみ成功する」とコメント。「デジタルユーロが公開協議で示された市民の期待に応えるものになるよう最善を尽くす」と述べている。
国際決済や流通管理についての意見
その他の項目では回答者の3分の2以上が、デジタルユーロへのアクセスを可能にする仲介業者の重要性を認識しており、既存の銀行や決済システムにデジタルユーロを統合する必要があるとした。
国際的な通貨を横断する決済についての質問では、決済のスピード(即時決済)、コスト、為替レートの透明性が重要とされた。また多くの者が、安全性とセキュリティが確保されていれば、ユーロ圏外でもデジタルユーロの使用を制限すべきではないと答えている。
技術的な事項についても多くの回答があった。市民の回答者の4分の1は、デジタルユーロについて、現金のように使える機能を促進するために、スマートフォンやカード型デバイスなどハードウェアのソリューションを好んだ。
また回答者のおよそ半数が、デジタルユーロの流通量を管理するために、それを保有できる上限や、段階的な報酬、あるいはその2つを組み合わせる必要があるとした。
段階的な報酬とは一般的に、貯金が一定額を超えた場合に、利子を付与する率を下げて保有インセンティブを低下させるなどの措置である。
段階的報酬を設定する場合には、それがデジタルユーロの使い勝手に悪影響を与えないよう、小売決済に十分使える額までは、有利な報酬を与えるべきと主張する回答が多い。
保有限度額が課せられている場合には、その限度額を超過した分のデジタルユーロを民間機関の口座に自動的に送金する仕組みが適当だという点でおおむね同意がみられた。
以上のように機能や国際決済、流通量管理など、様々な側面から意見が集められ、今後デジタルユーロを検討する際に参照されていく見込みだ。
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