アルゼンチン中銀、顧客の仮想通貨取引履歴を銀行に要求

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Argentina0901

顧客情報提供を求める

南米アルゼンチンの中央銀行が、国内すべての金融機関に対し、ビットコイン(BTC)をはじめとする暗号資産(仮想通貨)の取引履歴のある顧客情報を提供するよう要請していたことがわかった。

アルゼンチンの中央銀行(年間インフレ率50%)は、銀行に対し、暗号資産を保有、取引、または支払いを行っている顧客を特定するフォームへの記入を求めている。

この中銀の内部メールは、関連銀行へ送られたもので、地元のビットコインコミュニティがリークし明らかになったという。その後、地元メディアInfobaeが、金融当局に事実確認を行い、詳細に報道した。

アルゼンチン中銀が要求しているのは、「仮想通貨を保有する口座を持つ顧客、仮想通貨を利用した支払いの購入・売却・管理などを行っている顧客を特定できる情報」で、具体的には個人の氏名、住所、口座番号、及び国民識別番号だという。

中央銀行の目的

今回の措置は、国内で急成長している仮想通貨市場に、さらなる規制が必要かどうかの判断材料とするためだと当局は主張。そして、アルゼンチン中銀の決定の正当性を裏付けるのは、同行が持つ「決済システムの監督機能」であり、データの要求は「対象となる具体的なルールに関する検討の枠内」だとの認識を示した。

仮想通貨の使用または購入の量などの要素を判断するために、プロセスの一環として銀行に意見を求めた。規制の詳細化を進める前に、関心のある様々な事項について、銀行に情報を求めることは一般的だ。

個人の権利の侵害か

しかし、今回の中央銀行による仮想通貨ユーザーデータ収集は、「憲法で守られている個人のプライバシーや人権を侵害するものである」として、4月5日に集団訴訟が起こされた。

「銀行口座を利用して暗号資産の売買を行うすべての人々」を代表して訴訟を起こしたのは、弁護士のVictor Castillejo氏で、中銀が要求したデータの消去・個人情報が特定できないようにデータの分離を求めている。

Castillejo氏によると、中銀が求めた個人情報の提供にはデータ所有者の同意が必要であり、同行の行為は、個人情報保護法で定められている「同意、目的の原則」に準拠していないと指摘。

また、中銀が具体的な規制を行いたいのであれば、仮想通貨の取引量やユーザー数等のデータで十分であり、個人の身元や取引の目的を特定する情報は必要ではないだろうと同氏は述べている。

さらに、仮想通貨は財産の一部となり得る単なる資産に過ぎず、中央銀行に個人的な取引を監視する権限は与えられていないと強調した。

アルゼンチンの仮想通貨事情

アルゼンチンのインフレは深刻で、2019年のインフレ率は53.8%、20年が36.1%で多少し持ち直したものの、今年は世界で二番目に高い48%に達すると予想されている。アルベルト・フェルナンデス大統領は、3月末、国際通貨基金(IMF)への債務支払が非常に困難であると語った。

法定通貨の価値が下落する中で、一般市民は資産保護のため米ドルや仮想通貨に光を見出そうしているが、政府は資産流出を防ぐため、昨年5月に仮想通貨取引の規制強化を推進、9月には米ドルの購入に35%の税金を貸す決定がなされた。

これを受け、ビットコインをはじめとする仮想通貨、その中でも特にステーブルコインDAIの取引量が急上昇した経緯がある。価格変動を好まないユーザーは、ビットコインよりもDAIを選ぶ傾向にあり、アルゼンチンでは強力なユーザーコミュニティが存在するという。

古参のビットコイン支持者であるFranco Amati氏(前出のツィート発信者)は、今回、中央銀行が銀行に顧客データを要求した目的のひとつは、おそらく地元取引所の銀行口座を探し当てることではないかと推測。Amati氏によると、アルゼンチンでは銀行口座を使ったP2P取引が拡大しており、大手取引所バイナンスなどが市場をリードしているとのことだ。

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