中国とシンガポールの代表者がCBDCを語る
オンラインで開催中のダボス会議で、「デジタル通貨のリセット」と題されたパネルディスカッションが行われた。中国国立金融研究所の朱民所長、シンガポール政府のTharman Shanmugaratnam上級大臣らが参加し、CBDC(中央銀行が発行するデジタル法定通貨)についての議論を行った。
朱民氏は、中国人民銀行(PBoC)が行ったデジタル人民元の実証実験について言及。デジタル人民元計画は初期段階にあるものの、すでに平等性、透明性を高め、社会政策の遂行を促進する能力があることが明らかになったと報告した。
また、デジタル人民元のスケジュールについて聞かれ「定まったスケジュールはない」と答えた。
「金融や公共サービスにとっては、セキュリティと安定性が最も重要なこと」であるため慎重にシステムをテストしていく必要性を強調。今後も実証実験の数を増やしていく予定を明らかにした。
デジタル人民元が米ドルと競争することに関して中国に影響を与えるかという質問に対しては「そうした方向に進んでいるとは思わない」と否定。その上でCBDCは国境を超える性質を持つもので、その流通は決済システム、資本の流れ、外貨交換などといった市場の動きにより決定されるものだと説明した。
また各国政府の取り決めにも依存していると説明し、 例えばシンガポールと中国が互いにその発行するデジタル通貨を受け入れることに賛同すれば、両国はそのための契約に署名することが可能だと述べた。(シンガポールと中国はあくまでも一例として持ち出されたもので、実際にこうした契約が発表されたわけではない)
さらにプライバシー保護の側面については現時点で「大きな問題とは思わない」と語り、市場が発展していくときに、技術面などから解決していく問題であるとした。
中国では2月上旬に4回目のデジタル人民元実証実験が計画されており、約3億円相当のデジタル人民元が約3500以上の店舗で決済利用可能となる予定だ。
「デジタル通貨の多様性を回復する」
シンガポールのShanmugaratnam上級大臣は「eコマースは今や大きな力となっており、旧来の通貨世界も、現実に追いつく必要がある」と現在の状況を指摘する。
効率的決済システムを作る上で中央銀行の役割は、独占を防ぎ「多様性を回復すること」だという。「決済システムは公共財」であり、中央銀行には様々な選択肢にオープンであることを求めた。
またShanmugaratnam大臣は、小国にとってのCBDCのリスクについても言及。自国通貨が安定していない国では、人々は自国通貨が不安定になる局面で米ドルなど主流通貨に交換する傾向を一例ににデジタルなCBDCではより円滑に交換が可能であるため、こうした動きが加速してしまう可能性に懸念を示した。
大臣は、多くの選択肢にオープンである必要があると語ったが、多くの政府がFacebookの主導するステーブルコイン計画に懸念を示す中、シンガポールの国有ファンド「Temasek」はディエム(旧称リブラ)協会に参加しており、柔軟な姿勢の一端を示している。
また2020年6月には、シンガポールと中国がCBDCについて知識面で多くの交流を行っていることが報じられていた。
ジェンダーギャップ縮小の可能性も
国際開発と人道問題に関する独立シンクタンク「海外開発研究所」の最高責任者Sara Pantuliano氏は「CBDCは、既存のフレームワークよりもはるかに高速で、はるかに安価な国際送金システムを構築する可能性がある」と発言。
その他にも女性がより安全・確実に自分の給料を受け取れるメリットなどがあると述べ、現在の金融システムに内在する「ジェンダー格差の縮小に役立つ」と指摘した。
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