大手不動産会社がデジタル債券を発行
ドイツの大手不動産会社Vonoviaが、暗号資産(仮想通貨)ステラ(XLM)のブロックチェーンで2,000万ユーロ(約25億円)相当のデジタル債券を発行したと発表した。3年債となり、不動産の権利を譲渡するためにステラのブロックチェーン技術を使用する。
公式発表によると、Vonoviaはドイツを拠点とする社債流通のオンライン市場Firstwiseと協力してトークンを発行した。
Vonoviaの最高財務責任者(CFO)Helene von Roeder氏は、「デジタル化により、より速く、簡単に、安く資金を調達する機会が得られる」として次のように続けた。
私たちは経験を積むために新しいテクノロジーを試してみたいと思っている。これが将来の資本市場において重要な役割を果たすことは想像に難くない。債券発行は透明性が高くリアルタイムで追跡可能である。そのことによりプロフェッショナルな取引基準が保証され、世界中の新しい投資家を引き付けることができるだろう。
FirstwireのCEO兼創設者Michael Dreiner氏は、トークンの使用が機関投資家の資本市場に浸透しつつあり、長期的に債券ビジネスを変える可能性があり、今回の取引は画期的なものだという。
電子証券に関する法案を背景に、この取引は、債券発行を今後どのように設計できるかを示している。
Dreiner氏によると、Firstwireでは、企業が債券発行をデジタルでリアルタイムに完了することができるようになった。つまり、即時決済が可能になり、決済リスクが数日間続くことがないという。
デジタル証券を合法化したドイツ
Dreiner氏も言及したようにドイツは2020年12月、デジタル証券を導入する新たな法律を可決している。
これまでの法律では、証券発行者と保有者に、紙の証明書で取引を文書化することを義務付けていたが、今後は紙ベースの証明書のかわりに、中央証券保管機関や民間銀行が維持する登録簿を取引の証拠として使えるように変更。ブロックチェーン技術によって証券を管理することも可能にした。
なお、仮想通貨関連の法的な進展としては2020年1月に新マネーロンダリング防止法が施行され、株式や債券などの金融商品と同様に、銀行が仮想通貨のカストディサービスを提供することが可能になった。12月にはドイツの老舗銀行Hauck&Aufhäuserが、2021年初頭に仮想通貨ファンドを立ち上げることを発表している。
米国やスイスでデジタル証券のIPO事例
米国やスイスでは最近トークン化した証券によるIPOの事例もある。
2020年9月には仮想通貨取引のソリューション開発を行うINX LimitedがセキュリティトークンをイーサリアムERC20規格を使用して発行。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、USDコイン(USDC)でも投資を受け付けた。
スイスでは2020年1月に、初のトークン化した株式によるIPOが規制当局により承認。ブロックチェーン企業OverFuture社がイーサリアムブロックチェーン上で株式を発行するものである。OverFuture社によると、ブロックチェーンテクノロジーを採用することで、第三者(銀行、ブローカー・ディーラー、中央預託システム、公証人など)の仲介をなくし、手続きが迅速になるという。
さらに最近、ウクライナ政府がデジタル通貨(CBDC)および仮想資産のエコシステムを構築するため、ステラの開発を行うステラ開発財団(SDF)と覚書を締結したことが報道された。SDFが直接デジタル通貨を発行するのでなく、デジタル通貨開発に関するアドバイザーとなる模様だ。
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