「ステーブルコインは一夜にして重要になる可能性」
米FRBのパウエル議長が、プリンストン大学が主催するオンラインイベントに出演し、ステーブルコイン規制の必要性やデジタルドル発行についての見解を語った。
まず、法定通貨に裏付けされる暗号資産(仮想通貨)ステーブルコインについては、「一夜にしてシステム上重要になる可能性」があると指摘し、「私たちはまだ、その潜在的なリスクや、リスクをどのように管理するかについて方策を持っていない」状態であるため、引き続き重点的な課題としたいと語った。
一般の人々はFRBがステーブルコインのリスクを検討することを期待しており、それは当然のことだ。私たちは他国の中央銀行とこの課題に引き続き取り組むだろう。優先度が非常に高い。
ステーブルコインについてはFRBだけではなく、各国政府とも協調してリスク管理に取り組んでいく姿勢を改めて示した形だ。
2020年12月、米金融規制当局のトップで構成される米国大統領諮問委員会(PWG)は主に個人や企業が利用するリテール決済向けのステーブルコインについて、規制や監督上の問題について声明を発表している。
ステーブルコインは有価証券、コモディティ(商品)、デリバティブに分類される可能性があるため、該当する規制に従うようにする必要があるという。
この際、ステーブルコインを含むデジタル決済は、効率を高め、競争を促し、手数料を下げて金融包摂を促進するなど恩恵をもたらす可能性があるものの、リスクを管理し金融システムの安定を維持できるような方法で設計・運用されるべきだとした。
識者によるとこの声明は、米国の法律を変えるという積極的な提案ではなく、ステーブルコインに対するまだ初期段階の評価であるようだ。
米ドルは準備通貨であるためデジタル化には慎重
議長は、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルドルの発行可能性についても話した。
CBDCについては「慎重に検討する」姿勢であるという。米ドルは世界の準備通貨であるため影響が大きいこと、すでに準備通貨として優位性を持っていることから、特別に急いで発行を検討する必要はないと説明。
CBDCは恩恵と潜在的な対価、未解決の課題を有しており、そのユースケースや技術、何の役に立つかなどを考えるには、数ヶ月ではなく数年単位の時間が必要だと述べた。またそうした項目を検討するにあたっては、議員、金融セクターの参加者、市民への「大規模な」アウトリーチを行いたいとも語る。
CBDCを巡る中国と欧州の状況
CBDCについて大国では特に中国がリードしており、すでに深セン市や蘇州市で、市民にデジタル人民元を配布し、実店舗やオンラインショッピングでの決済を行う大規模実験が繰り返されている。
デジタル人民元については、正式に発行されれば米ドルやユーロの競争力を弱めるのではないかと指摘する声もあり、オランダの非営利シンクタンク「dGen」は、将来の各国CBDCの勢力図を予測し「2025年までに欧州がCBDCを持たなければ、ユーロはデジタル人民元に追い抜かれる」と論じた。
欧州中央銀行(ECB)の執行委員は、デジタルユーロが必要となるシナリオの一つに「外国のデジタル決済手段が流入し、EU圏の貨幣の脅威となるケース」を挙げている。
これには、Facebook主導のグローバルなステーブルコインやデジタル人民元などが当てはまりそうだ。ECBの責任者によると、欧州は2021年半ばにデジタルユーロのプロジェクトを本格的に立ち上げるかどうかを決定する見込みである。ただローンチするとしても、即デジタルユーロ発行を意味するわけではないとしている。
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