温室効果ガス排出量を追跡する概念実証
世界経済フォーラム(WEF)の鉱山・金属ブロックチェーン・イニシアチブ(MMBI)は、分散型台帳技術を用いて、バリュー・チェーン全体の温室効果ガスの排出量を追跡する概念実証が完了したと発表した。
MMBIは、鉱業・金属業界の世界大手7社が昨年10月にWEFと連携して設立したイニシアチブで、原材料の追跡やCO2排出量の報告など、透明性や効率性の向上に貢献するブロックチェーンプラットフォームの開発を目指している。
WEFの声明によると、今回概念実証に成功したブロックチェーンプラットフォームは、COT(Carbon Tracing Platform=炭素追跡プラットフォーム)と名付けられており、鉱山から最終製品に至るまでの排出量のトレーサビリティに焦点を当てているという。
開発参加企業と開発の目的
MMBIの創設メンバー企業は次の7社で、オランダに拠点を置くブロックチェーン企業「Kryha」と、コンソーシアムアドバイザーのSusan Joseph氏の支援を受け、サプライチェーンの可視性とESG(環境、社会、ガバナンス)要件を満たすためのソリューションを設計する。
- Anglo American(イギリス)
- Antofagasta Minerals(チリ)
- Eurasian Resources Group(ルクセンブルク)
- Glencore(スイス)
- Klöckner & Co(ドイツ)
- Minsur(ペルー)
- Tata Steel(インド)
WEFの鉱業・金属産業担当責任者のJörgen Sandström氏は、金属や鉱物資源に対する需要が高まる中、持続可能で責任ある「追跡可能な」サプライチェーンの需要も高まっていると述べている。
MMBIは、COTが技術的に実現可能かどうかを試すだけではなく、将来的なデータ活用の要件を設定するために、サプライチェーンの複雑な原動力についても詳しく調査するという。そうすることで、「鉱山から市場まで」の可視性と説明責任の創出という、利害関係者の要望に答えることになる。
COTの概念実証は、開発の次の局面の基礎を築くものであり、今後は、多くの利害関係者から包括的なフィードバックを取り入れ、分析する段階へと進んでいく。
Tata SteelのT V Narendran最高経営責任者は、この概念実証は「ブロックチェーン技術の力を借りた、排出量を削減と環境保全のためのソリューションを創造する最初の実用的なステップである」とコメントしている。
ブロックチェーンがもたらす新たな可能性
WEFのブロックチェーン関連プロジェクトを率いるNadia Hewett氏は、ブロックチェーン技術の分散性により、企業間のコラボレーションが可能になるため、一つの組織では独自になし得なかったような「心躍る新しい可能性」を切り開くことができると述べている。そして、このような協業により「究極のネットワーク化された技術」が生み出されると強調した。
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