「FATFの規制枠組みはDeFiには不十分」
暗号資産(仮想通貨)業界サミット「V20」で、分散型金融(DeFi)には新たな規制アプローチが必要であるとの声が挙がった。暗号資産サービスプロバイダー(VASP)向けコンプライアンス・コンサルタント企業XReg Consultingのシニアパートナー、Siân Jones氏がサミット最終日の18日に議論している。
仮想通貨業界は、すでに国際的な規制機関である金融活動作業部会(FATF)の国際的な送金ルールの適用を始めている。しかし、DeFiスペースには、まだ規制が行き届いていないのが現状である。
Jones氏は、マネーロンダリングを防止するFATFの枠組みは、SWIFTなどの国際送金システムが導入された時代の従来型銀行間でやり取りする仕組みに基づくものだと指摘。しかし、技術や運営がまったく異なる仮想通貨の世界でも、取引所などが仲介する場合は適応する可能性があるとした。
一方で、中央集権的な仲介者を持たないDeFiのケースでは、現行の枠組みに当てはめるのは困難だと考えるが、仲介者を省くという性質は、元々仮想通貨誕生の背景にもあったものだと意見した。
仮想通貨は、法律をかいくぐったり、マネーロンダリングを行うために生まれたのではなく、金融の世界から銀行など仲介者を取り除きたいという欲求から生まれたとJones氏は主張している。
FATFとDeFi関係者の対話が必要
こうした当初の欲求を体現するDeFiが台頭している状況は、FATFのマネーロンダリング防止の目的とは対立するもので、コミュニティ全体による新たな規制アプローチが必要だと主張している。無理やり現行法に当てはめて、ストッパーをかけることへの懸念を表した。
FATFは、DeFiソフトウェア開発者や、中央集権型の仮想通貨の世界に属していないユーザーを含む、すべての関係者との関わりを倍増する必要がある。また、業界はより緊密に協力して、合意形成しFATFや各規制当局と関わっていく必要がある。
FATFと対話するために業界を代表する単一のユニットを設けることや、FATFとの協議を四半期ごとではなく、月ごとに増やすことも提案した。
V20サミットでは初日に、FATFのDavid Lewis事務局長もFATF推奨ルールの施行はまだ不完全であると語っている。
規制の抜け穴を残す管轄区域(国や地域)が存在していることや、取引の匿名性を高めるために、分散型取引所、プライバシーコイン(匿名通貨)、ミキサーなどのツールが使用されることを課題として挙げた。
中央集権型の仮想通貨取引所だけではなく、これからDeFIの世界にも規制を導入することが探られていきそうだ。
欧州連合(EU)の「Markets in Crypto-Assets(MiCA)」という仮想通貨規制法案では、サービスプロバイダーがEU加盟国で法人登録し、実在するオフィスを設けると規定。そうでないケースでは、EUの住民にサービス提供できないとしている。
この法案が承認された場合、企業の形を取らない多くのDeFiプロジェクトやプロトコルが遵守できるか懸念されている。
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