バイナンスが出口詐欺の盗難資金を掌握
最大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスが、そのプラットフォーム上で発覚した出口詐欺を追跡し、被害にあった顧客資金を取り戻したことが分かった。
Here’s how the #Binance Security team helped recover ~$345,000 stolen in a #DeFi exit scam. https://t.co/aF6OgM8DZ7
— Binance (@binance) November 4, 2020
これは、バイナンスが今年9月1日に立ち上げたばかりの新たなブロックチェーン「バイナンススマートチェーン(BSC)」に構築されたDeFiプロジェクトとして公開された「Wine Swap」によって34万5000ドル(約3600万円)相当の仮想通貨が盗まれていたもの。
バイナンスは、被害額のうち、推定99.9%を取り戻したと宣言している。
尚「バイナンススマートチェーン」は、DeFiプロジェクトの構築に焦点を当てたプラットフォームで、スマートコントラクト機能の実装や、トークンのクロスチェーン送金機能などを提供している。
DeFi詐欺「WineSwap」の経緯
バイナンスによると、10月13日にWineSwapはBSC上でリリースされたDeFiプロジェクトであったが、発売から1時間以内には集まった34万5000ドル相当のユーザー資金を集めて逃げようとしていたという。
WineSwapのアドレスに保持されている19銘柄の仮想通貨を、作成者個人アドレスに移動することによって出口詐欺を行おうとしていた格好だ。
詐欺の報告を受けたバイナンスのセキュリティチームは、資金の追跡を開始。119のアドレスから送金された被害額は、BSCからバイナンスチェーン、次にイーサリアムへとクロスチェーン転送を介して移動されたことを特定した。
また一部は2つの仮想通貨取引所と、バイナンスブリッジ(ブロックチェーン間流動性へのアクセスを提供するサービス)にも移されており、こうした集中型取引所では、盗難資金はすでに凍結処理されていたという。
盗難資金はステーブルコインや、バイナンスコイン(BNB)、イーサリアム(ETH)、リンク(LINK)に変換済だった。セキュリティチームはさらに、Wine Swapとの通信を分析し被害アドレスを特定、戻すべき金額を計算した。
中央集権組織がDeFiを扱う強み
詐欺の翌日14日に、チームは詐欺師を特定することに成功し、すぐに連絡を取った。すると詐欺師は観念して盗んだ資金をバイナンスに返却することに同意。現在バイナンスは、被害額を元のトークンに戻す作業を進めているという。
バイナンスCEOのCZ氏は、被害額を取り戻したことを受けて「集中型の組織は、このようにリソースを使ってDeFiで被害を受けたユーザーを助けることができる」とツイートした。
CeFi(中央集権型金融)である取引所がDeFi(分散型金融)を扱うことで、ユーザーのセキュリティを高められると示唆した格好だ。
ただ、バイナンスは今回の件を報告するに当たり「毎日新しいDeFi製品が登場しているため、すべてのプロジェクトの正当性を検証することは困難で、失われた資金を完全に回収できる詐欺は非常に稀な事例」であるとして、参加前にDeFiプロジェクトについて精査する必要があるとユーザーに警告している。
バイナンスチェーン上のプロジェクトであっても、精査せずに資金を入れるリスクを改めて強調した。
大手ヘッジファンドも注目
今年の夏に急速にブームとなったDeFiには、仮想通貨ヘッジファンドも注目しており、大きな利益を上げているところもある。
米国最古の大手仮想通貨ヘッジファンド「Pantera Capital」も、DeFi関連銘柄への投資を重視しており、DeFiセクターはバブルではなく金融の未来であり、これから2年か3年で大きく成長するとの見解を示している。
一方で多くのプロジェクトが濫立しているため、今回のような詐欺プロジェクトを識別することが重要だ。
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