デジタル通貨の現在と未来
シンガポールを拠点にするDBS銀行のチーフエコノミストが、新型コロナウイルスの感染拡大がビットコイン(BTC)の普及を加速させるとの見解を示した。
Taimur Baigチーフエコノミストは、DBS銀行が公開したデジタル通貨の現在と未来についてレポートで、ビットコインはコロナ禍以前は主に投機の対象であったが、供給量が固定されているBTCは現在、ゴールド(金)同様に安全資産として投資対象に変化しつつあるとした。
レポートでは、中銀発行のデジタル通貨(CBDC)から民間発行の暗号資産(仮想通貨)までを広く考察。デジタル決済には長い歴史があるが、今年は1つの大きな節目になると紹介している。
通信接続、可搬性、データ保存における技術が急速に発展したことによって、デジタル決済はここ数年で大きく進歩したとして、そこにコロナの感染拡大が追い風となり、今は現金に依存しない動きが高まっていると分析した。
仮想通貨の普及については、新たな潮流の中で新たな技術が発展、通貨の供給や価値の保存手段に大きな影響を与えていると指摘。ビットコインの資産性の捉え方については、米ドルに対する1つの外貨のようにBTCをとらえるのではなく、「仮想通貨の信用はシステムによる供給に基づいており、国の財産に結びついていない。国の経済の浮き沈みに左右されないため、ゴールドと同様に考えるべきだ」と述べた。
実際に、政府主導の金融政策などを機に、コロナ禍の経済対策が行われる中で、機関投資家や企業の仮想通貨、特にBTCに対する見方は変化している。例えば、ヘッジ・ファンド業界のベテラン投資家ポール・チューダー・ジョーンズや米ナスダック上場企業MicroStrategyらがBTCに投資していることが明らかになった事例や、MicroStrategyが「米ドル無限印刷」に対するインフレヘッジ手段としてBTCを利用したケースもその一例だ。
デジタル経済の傾向
また、DBS銀のレポートでは、デジタル経済の最新傾向についても紹介している。
レポートによると、デジタル決済が最も普及しているのはアジアで、特に中国だけで世界の決済の約50%を占める。今後の予想を含めたデジタル決済のボリューム推移が以下の左の棒グラフで、右の円グラフが今年の地域別の割合になる。
仮想通貨市場についても、アジアが重要な役割を果たしていると分析する。
流動性や出来高で判断すると、世界トップ10の取引所の半分がアジアに拠点を構え、BTCのマイニングのハッシュパワーの約7割を中国に、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)はシンガポールが世界的な中心地になっているとする点などを例に挙げた。2017年以降ICOの数では、米国とスイス、シンガポールが世界トップ3になっているという。
また香港にも一般金融と同様に、取引所やトレーディングプラットフォームが数多くあり、その中には世界最大規模のものもあると紹介した。
参考資料 : DBS銀行
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