ブロックチェーンが独占禁止法に与える影響
米国司法省反トラスト局の司法次官補、Makan Delrahimがブロックチェーン技術が特に分散型市場で独占禁止法に大きな影響を与え得ると指摘、予想されるその正負両面について論じた。
この内容を含むスピーチはノースウエスタン大学がオンラインで主催した、イノベーション経済学に関する第13回年次会議におけるもの。
Delrahim次官補は、マサチューセッツ工科大学の経営大学院が提供したブロックチェーンについての授業に他のスタッフと共に参加し、ブロックチェーン技術によるソリューションがテクノロジー、ビジネス、社会に革新的な影響をもたらすことを認識したという。
市場の集中化を防ぐ
Delrahimによると、ブロックチェーンがもたらす重要な利点としては、それがネットワークのコストを劇的に削減する手段を提供することだ。
従来のソリューションでは、ネットワークのインフラストラクチャを所有する企業は、ネットワークが大規模化するにつれ増大するコストに直面することが多かった。
しかしブロックチェーンは、中央集権的な仲介者なしで市場やネットワークを運営することを可能にし、コストを下げることができる。
これによりブロックチェーンが消費者や企業に対し低コストな選択を提供し、市場権力の集中化を防ぐ効果を持つ可能性があるという。
ブロックチェーンの欠点:談合での利用
一方、ブロックチェーンシステムの欠点として次官補は次のように指摘。
個々の参加者がブロックチェーン・ネットワークを構築したり維持したりすることに時間的経済的コストを費やすインセンティブを欠いている可能性がある。
続けて、それが談合など競争を排除するために使われてしまう可能性にも言及した。
例としては、食品業界が、商品トレーサビリティなどを提供する許可型ブロックチェーンを構築することを挙げる。
もし各企業がそのブロックチェーンへアクセスするための条件として、特定の価格や生産量に合意することが要求された場合、公正な競争は失われ消費者は甚大な被害を被ることになり得るという。
またパブリックブロックチェーンは、競争上機密にしておかなければならない情報の共有を容易にする可能性もあるとした。
さらにスマートコントラクト機能は、反競争的な契約の設計と実施を容易にするリスクもあるという。
Delrahim次官補は次のように締めくくった。
独占禁止法の執行者は、この新しい技術がどのように機能するのか、それが競争にどのような影響を与えるのか、そして既存の企業がそれを実装するために何をしているのかを理解することが非常に重要だ。
また、独占企業が反競争的な行動を行い、公正な競争を妨げるのを防ぐ必要があり、反トラスト局はブロックチェーンやAIなど新興技術についてのトレーニング・イニシアチブを導入すると述べた。
「リブラ」が独占禁止法の観点から調査された事例
独占禁止法と仮想通貨をめぐっては、昨年夏に欧州委員会がFacebook社主導のステーブルコイン「リブラ」について「潜在的な反競争的行動」ではないかと調査した事例がある。
リブラを利用した新しい決済スキームが競合他社との健全な競争を妨げる可能性があるかに焦点を当てた調査だった。
その後リブラ協会は、各国政府機関などからのプロジェクトへの懸念表明も背景として、方針を転換し新たなホワイトペーパーを発表。単一通貨を担保とする複数のステーブルコイン発行を目指す計画に変更した。
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