YouTube先生に教わり、最年少(9歳)で数検1級合格
兵庫県西宮市の安藤匠吾君は2019年10月、9歳(小4)で実用数学技能検定(数検)の1級に合格し(※) 、これまでの最年少記録11歳を大幅に塗り替えた。
※編集部註:主催する公益財団法人日本数学検定協会によれば合格率は5.7%。目安となる学年は「大学程度・一般」。微分法、積分法、確率、確率分布、数値解析、アルゴリズムの基礎などに関する出題がある。
「数学一家」かと思いきや、両親はどちらも文系だという。
「もうびっくりです。わが子の数学の話には、とっくについていけないです」(父・貴弘さん)
1歳の頃から数字を並べるマグネットで遊ぶなど、数に興味を持っていた匠吾君。
「幼稚園のときに、計算式が書かれたボタンを押してから、答えを入力するというおもちゃを買い与えたところ、割り算まですんなりマスターしてしまいました。卒園するころには分数や小数、負の数まで理解していたと思います」(貴弘さん)
小2で数検を受け始め、5級から3級(中3レベル)まではトントン拍子に受かったという。
「3級までは私が教えていましたが、因数分解や連立方程式で私のほうに限界がきてしまいました。その後、海外赴任で2年ほど家を空けることになったので、どうやって教えようかなと悩んでいたところに匠吾が見つけたのがYouTubeの数学解説動画でした」(貴弘さん)
iPadを取り出し「二次不等式 ウェブで調べて」と音声検索開始
二次不等式でつまずいたところから匠吾君のYouTube学習が始まった。わからない内容や、新しい単元に出合ったら、YouTubeで検索して、学習しているという。
「どうやって調べるの?」と匠吾君に聞くと、おもむろにiPadを取り出し「二次不等式 ウェブで調べて」と音声検索を始めた。検索はほとんど音声でやっているという。出てきたのはお気に入りのYouTuber本田剛己さんによる“超
わかる!授業動画│数学・英語・化学”というチャンネルだ。図解しながら丁寧に解説してくれるところが好きだという。
「ヨビノリたくみさんの“予備校のノリで学ぶ『大学の数学・物理』”チャンネルも好き。重積分の勉強はこれを見てやりました。『ファボゼロのボケすんな(“いいね!”がつかないようなボケをするな)』っていうのが面白いです」(匠吾君)
今は物理や化学に興味を示し、YouTubeを使って勉強する
動画で見たことは1回でわかってしまうという匠吾君だが、準1級レベルから独学に限界を感じはじめたという。
「やはり、人に教わったほうがいいのではと思い、近所で塾を探しましたが、小学生に準1級レベルを教えられるような先生が見つかりませんでした。大阪に大手の塾があるのですが、小3を遠くまで通わせるのも不安があり、たどり着いたのがオンライン家庭教師の“究進塾オンライン”です」(貴弘さん)
究進塾オンラインでは週1回1時間、東京大学理学部数学科(当時)の深澤武志先生に教わったという。
「匠吾が問題集で解けなかったものを私がスマホで写真をとり、先生に送っていました。それをもとに先生が準備をしてくださって、スカイプでお互いの手元の解答を見せ合いながら指導していただく流れです。先生も大人向けではなく匠吾に合わせてやさしく教てくださって、とても親切でした」(母・方美さん)
匠吾君も「二次曲線がわからなかったときに、先生が丁寧に解説してくれて、わかりやすかったです」と満足そうだ。YouTubeやオンライン家庭教師がなかったら、準1級以上は受かっていなかった、と匠吾君。
「数学のノーベル賞、フィールズ賞を取りたい」
数検を取り終えたあとは物理や化学に興味を示し、YouTubeを使って勉強する日々だ。現在は中学受験の塾に通い、国語や理科などを補いながら灘中学への入学を目指している。
「ほっといてもどんどん学んでいくんです。自分で学べるのがYouTubeのいいところですよね」(貴弘さん)
匠吾君に将来の夢を聞いた。
「数学のノーベル賞、フィールズ賞を取りたいです」
数検準1級、英検1級、漢検2級に合格した富山県の小6女子
淵上理音さんは数検準1級、英検1級、漢検2級に合格した富山県在住の小学6年生女子だ。
彼女が最初に興味を持ったのは算数だった。お父さんの龍さんによると、「理音は3、4歳の頃から、幼児向け・小学生向けのドリルを解くのが好きだったのですが、小1の秋に小6の内容ができるまでになったのです。そこで力試しに数検7級(小5相当)を受けさせてみたら合格しまして。その時に、英検というのもあるよと伝えたら、それもやってみたいと言い出しました」という。
とはいえ、それまで英語の勉強をしたことはない。英検にも合格したいと言ったとき、本当の意味で英語ができるようになりたいと思ったわけではないと直感した龍さんは、「大人でも習得するには苦労するらしい英語という外国語を、小学生の自分にもできることを証明して認められたい、ということだったのでしょう。そこで、無理に英語を好きにさせようと小手先でごまかすのではなく、わが子に芽生えた自尊心を満たしてやる方法を考えました」と言う。
子供にとって最大の報酬は達成感を得られること。そして、大人(親や教師)や社会(学校や友達)からの承認を得られること。それを自ら求めるよう仕掛けたという。
日本中どこでも誰でも受けられ、級別に到達目標が明確に示されているので学習計画を立てやすい。そして合格すると達成感が得られる。検定の魅力を、龍さんはこう話す。
小3で漢検2級、小4夏に英検1級、秋には数検2級に合格
小4までは、数検、英検、漢検や全国統一小学生テスト、算数オリンピックなどで良い成績を収めることを目標として勉強させた。小3で漢検2級、小4の夏には英検1級、そして秋には数検2級に合格。
高校レベルの数学、英語、漢字の勉強が一通りできたので、次の目標は、センター試験の模試に挑戦すること。古文や漢文の勉強も始めたそうだ。
「古文の勉強から平安時代の文学に興味を持ち、その流れで天皇や日本史にも関心を持つようになりました。さらに昔から日本と密接な関係にあった中国大陸の歴史にも興味を持ち、中国語の学習のきっかけにもなりました」
ハングル語、アラビア語、ムスリムやクルアーン(コーラン)へと興味は広がっているという。
「テキスト選び、試験の申し込みなど、できることは親がしました。小3までは一緒に勉強していましたが、小4からは完全に彼女の独学です。とはいえ、まだ小学生。一人では行き詰まることもあるので、小学生の間はできるだけ横に座って見守るようにしています」
家庭の教育方針は「歯磨きをするように家庭学習を習慣化すること」
淵上家の教育方針は「歯磨きをするように家庭学習を習慣化すること」だという。子供が小さい頃は、親が歯磨きをしてやる。低学年になれば自分で磨けるようになるが、親の仕上げが必要。高学年になっても、虫歯がないか親の確認は欠かせない。
もちろん、ただ磨けばいいというものではない。適切な歯ブラシを選び、正しく磨かれているかのチェックも必要だ。歯磨きは1日3回、盆も正月もないのが当たり前。理音さんは、歯磨きと同じように学ぶことを習慣化したようだ。
今年1月に行われた「センター試験同日体験受験」では、英国数3科目の得点率が90.7%で、1万5904人中16位(新高1生内順位は1位)。今、一番はまっているのが大清帝国の研究で、現代風にアレンジした歴史漫画を執筆中らしい。
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