ING銀行、トラベル・ルールに準拠するソリューションを発表
オランダを本拠として50ヶ国以上で業務展開する大手銀行INGは23日、FATFのトラベル・ルールに準拠するためのプロトコルを発表した。
金融活動作業部会(FATF)が策定したトラベル・ルールは資金洗浄防止のための国際的な送金ルールで「仮想資産サービス・プロバイダー(VASP)」には、仮想通貨取引の際、送金者と受取人の情報を収集・交換することが求められる。VASPには仮想通貨の交換、移転、保管、および発行や引受を行う事業者が含まれる。
このルールへの対応状況を巡る審査は今月から開始予定であり、各機関は対応を急いでいた。
ING銀行の開発したプロトコルはインターネット上のある場所から別の場所にデータを転送するRESTful(Representational State Transfer)APIを特徴としている。
参加するVASPは、アドレス記録を発行することで、そのアドレスにリンクされたIDとデータを関連付けることができるという。
INGが開始したソリューション(現在のところ、Travel Rule Protocol(TRP)と銘打たれている)は、大手銀行スタンダードチャータードや、Fidelity Digital Assets、BitGo、などの仮想通貨関連企業も後援している。
ING銀行は仮想通貨カストディ技術も開発中
銀行がトラベル・ルールのソリューションに関与したのは初のこととなる。
INGグループは、仮想通貨やブロックチェーンに前向きな銀行であり、昨年には顧客に安全な仮想通貨ストレージを提供することに向けて、カストディ技術を開発中だと報道された。
INGの担当者は「ブロックチェーン/ DLT(分散型台帳技術)のイノベーションリーダーとして、資産担保証券とセキュリティトークンの両方で、デジタル資産に関する機会が増えると見ている」と述べ、金融業界でブロックチェーンを推進していく役割を果たす姿勢を見せた。
トラベル・ルールに関しても、様々なワーキンググループに参加し、今回開発したソリューションの大量採用を目指していくという。
関係者によると今のところ、INGは仮想通貨ビットコインのような決済トークンではなく、デジタル化した有価証券である、セキュリティトークンを扱うことに的を絞っている。
FATF基準対応のための技術開発が盛んに
FATF基準に対応するための技術開発は盛んになっており、最近では「事業者間メッセージング規格のためのジョイントワーキンググループ(IVMS)」が取引処理と共に送受信者の情報データも送信できる新規格「IVMS101」を開発した。
こうした統一規格を採用することによって、関連企業が開発コストを削減できるようになる。INGの開発したTRPも、一部この「IVMS101」によりサポートされている。
またスタートアップ企業「Notabene」もトラベル・ルールに焦点を当てた技術を開発している。取引に関連する金融機関がKYC(顧客身元確認)情報を交換できるものだ。
分散ID管理を使用して、ブロックチェーンアドレスを検証済みの身元確認情報に結びつける。またリップルがサポートするPayIDや、その他の団体が開発するソリューションとも互換性があるという。
FATF基準に対応する技術提供は異なるプロトコル同士の互換性などの課題もあるが、テクノロジー企業にとってチャンスとなっている。
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