制裁を実行するための分析ツール
米財務省の外国資産管理局(OFAC)がブロックチェーン分析ツールを提供できる業者を求めていることがわかった。
分析ツールは、OFACのグローバルターゲティング局(OGT)がビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)取引を追跡して、制裁対象(SDN)リストに掲載する可能性がある者の情報を収集するために使われるという。
インターネット上の行為者の帰属情報を確定するためには、2つ以上のツールがあることが理想的とされている。また、OFACが証拠として使用するために、法的要件を満たす必要がある。
具体的には以下の機能が必要である項目として挙げられた。
- アドレスのグループ分け
- トランザクションフローのマッピングとグラフ化
- 仮想通貨ウォレットのエクスプローラー
- ユーザー行動
- 為替レートのデータ
- 取引データ
- 市場データの分析
OFAC側は、こうした分析ツールの情報を提供できる団体を、2021年5月25日まで募集する。
4月に、OFACはロシア政府の指示で2020年の大統領選挙に不正関与を試みたとして、16の団体への制裁を発表。関連団体に利用された仮想通貨アドレスのブラックリストを公開していた。こうした背景からも、制裁実施体制を強化していると考えられる。
軍事組織もブロックチェーンに関心
近年、中国、ロシア、米国などの軍事組織もブロックチェーン技術への関心を高めている。米大手シンクタンクであるランド研究所の研究者達は、これらの組織の公式声明を調査して、ブロックチェーンがどのように捉えられているのかを分析する論文を発表した。
アメリカではデータ保護のためにブロックチェーンに可能性を見出している一方で、制裁回避・テロ資金調達に仮想通貨が使用されていると紹介される事例も多かった。
ランド研究所のSale Lilly氏やBilyana Lilly氏は、根本的に世界の金融システムにおける米国の優位性が、ブロックチェーンや仮想通貨の議論にも反映されていたと説明。その優位性を維持することが、米国にとって国家安全保障上の優先事項であり、仮想通貨に対する見方にも独特の影響を与えていると論じた。
中国の軍事組織では「物流、設備管理、専門的な学習」においてブロックチェーンを応用することに焦点を当てている傾向があると指摘。また、商業的な情報技術を防衛プログラムに転換することにも関心を持っているとした。
一方、ロシアは安全な軍事通信や、戦闘命令の管理などの文脈でブロックチェーンについて触れていたものの、公開されている限りブロックチェーンに関する議論は非常に少なかったと言及した。
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