「仲介者をなくすことがブロックチェーンの革新性」
リサーチ・アドバイザリー企業Gartnerが、VISAの新たな暗号資産(仮想通貨)関連サービスについて疑問を投げかけた。従来型の金融会社がステーブルコインを取引に利用することこそ、革新的だと主張している。
クレカ大手VISAは2月3日、銀行がビットコイン(BTC)などのデジタル資産の売買サービスを提供できる仕組みを整える新事業を発表した。
こうした方向性について、GartnerのアナリストAvivah Litan氏は「消費者、企業、ブロックチェーン間を技術的につなぎ、将来の決済インフラストラクチャへの移行の準備を助ける」ものだと評価。
しかし一方で、こうしたサービスはブロックチェーンの革新的な性質にはそぐわないものではないかとして、次のように指摘した。
ブロックチェーン決済の革新性は、ピアツーピアで取引を実行し、中央の仲介者や関連する銀行手数料を排除することにあるはずだ。中央集権型サービスの台頭により、仮想通貨を移動するため追加の取引手数料を支払わなければならないとすれば、疑問が生じる。
ピアツーピアで取引を行うことにより、中間手数料を排除することがブロックチェーンにおいて革新的であったが、VISAや銀行などの仲介機関が仮想通貨を扱って手数料を取ることで、そうした革新性は薄れてしまうという意見だ。
「ステーブルコイン決済の導入が望ましい」
Litan氏は、ステーブルコイン決済の導入をより良い代替案だとして、そうした望ましいサービスの特徴を5つ挙げた。
- 法定通貨に固定されたステーブルコインによる低コストのオンチェーン決済
- ステーブルコイン決済を実行するための簡単にアクセス可能なアプリケーション
- 現在のカードネットワークよりも低い決済手数料
- 決済の基礎情報と紐づいた、ブロックチェーン上の透明性あるリアルタイムのステーブルコイン決済
- カード会社と銀行が、提携先の銀行口座にオフチェーンで保管されるステーブルコインを保護
このシナリオではカード会社など決済企業が、ユーザーが取引で使用するステーブルコインを発行する。しかしブロックチェーン上で発生する実際の決済には関与しないという。また加盟店においても、現在のようにカード取引に関連した取引手数料を支払う必要がない。
カード会社はそれでも、法定通貨とステーブルコインを交換する際の付加サービスや、ステーブルコインの基礎となる裏付け資産の利子などから収益を得ることができるという。
また、ビットコインなどの仮想通貨は価格が不安定なため決済機能が採用される可能性はそれほど高くないとする。その点、ステーブルコイン決済は、特に企業間取引(B2B)の分野で求められていると述べた。
PayPalは今年中に仮想通貨決済開始
決済企業ではVISAの他、PayPalが今月、仮想通貨決済サービスを2021年中に開始する予定だと発表したところだ。
提携する世界の小売店2900万店舗において仮想通貨決済サービスを導入し、消費者の日常におけるデジタル通貨決済をサポートしていくとしている。
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