緊急事態の最中、ハンコを押すために出社する

わが国のテレワーク推進に1つの障壁がある。それは、日本企業に根付く“ハンコ文化”だ。組織内の下から上まで、多くの人の合意を確認しながら意思決定を行うことは、日本の伝統文化である。

大手金融機関に勤める知人は、「政府の緊急事態宣言にもかかわらず、書類に確認印(ハンコ)を押すために出社している」と言う。こうした声は多く聞く。ハンコ文化はわが国では当たり前のことなのだが、現在のような緊急事態の発生時にはいかにも時代遅れな文化といえるだろう。しかし、そうした伝統を一気になくすことは難しい。

新型コロナウイルスの感染拡大によって国内外の経済は大きく混乱している。同時に、今後の世界経済をけん引すると期待される新しい取り組みも進んでいる。端的に、世界経済を規定するメガトレンドが出現しつつある。

テレワークはその1つだ。IT業界などでオフィスの賃貸契約を解約するケースが出ている。背景には、固定費の削減に加えテレワークのほうが作業効率が高まるという判断がある。今後はAIを用いた作業の効率化など、さまざまな変化が急速に進むだろう。ハンコ文化などわが国の常識が今後の変化に対応できるか否か、わたしたちは冷静に考えなければならない。